最新記事

森林火災

カナダで気温49℃、森林火災で町の9割が火の海に 火災積乱雲に警戒

2021年7月5日(月)17時30分
青葉やまと
カナダ、ブリティッシュ・コロンビアの火災

炎に覆われるブリティッシュ・コロンビア  2 RIVERS REMIX SOCIETY / VIMEO.2RMX.CA/REUTERS

<カナダ西岸の町で、国の観測史上最高となる気温49.6℃を記録。高熱と乾燥が大規模火災を招き、町の9割が消失した。州内では、特殊な「火災積乱雲」による事態悪化が懸念される>

ヒートドーム現象による高気温が続くカナダで、気温が観測史上最高を記録した。バンクーバーが位置する西岸のブリティッシュ・コロンビア州(以下「B.C.州」)では、高温と乾燥した空気によって100件超の山火事が発生し、現在も進行している。

同州の山間にあるリットンの町では、気温が華氏121度(摂氏49.6度)に達し、カナダ観測史上最高を記録した。高気温はその後、町内で大規模な森林火災を招くことになる。カナダ民放局のCTVは地元紙の情報として、7月1日朝までに被災面積が2万エーカーに達し、リットンの町の90%を焼き尽くしたと報じている。

火災発生を受けて町民250人全員に対して避難命令が出されたが、これまでに2名の死亡が確認された。町長はカナダ放送協会のインタビューに対し、「悲惨な状況だ。町全体が炎に包まれている」と述べている。強い南風にあおられ、火災は一時、時速10キロから20キロの早い速度で北側へ広がったとみられる。

当時炎は人間の腰から腹ほどの高さに達し、町の至るところで家屋が火に呑まれた。町長は自らの避難の瞬間を振り返り、「町を車で抜けたが、もう一面の煙と炎で、電線は至る所で切れて垂れていて」と述べる。火は猛烈な勢いで広がっており、町の一部で煙が確認されてから一帯が火に呑まれるまで、ものの15分ほどだったという。ある住民は「ただただ信じられません。理解が追いつかない」「私たちの町がまるごとなくなったんです」と呆然と語っている。

Wildfire in British Columbia Forces Evacuation


Canada heatwave: resident films escape from wildfire as flames engulf Lytton village


Driver surrounded by smoke, flames as wildfire rages in BC


列車火災が延焼か ほかにも山火事は173件

町を壊滅状態に追い込んだ火災は自然発生したものとみられていたが、 その後の調査により、町内を通過する列車が火元になった可能性が浮上した。渓谷を流れるフレーザー川沿いに広がるリットンの小さな町は、南北に走る主要道路と並行し、鉄路が走っている。

町に住む夫妻はカナダのグローバル・ニュースに対し、列車の下で燃える炎を見たと証言している。また、同じ目撃談が現地付近の先住民族からも寄せられた。列車はリットンの町を通過した後に出火が確認され鎮火しているが、これ以前に自然豊かな沿線の草木に火種を撒き、高気温と乾燥で町全体に延焼した可能性が疑われる。

リットンの例に限らず、B.C.州内ではほかにも火災が続出している。公共放送のカナダ放送協会は7月3日、同州内の消防隊が170件以上の森林火災への対処を迫られていると報じた。一部地域では煙によって視程が悪化しており、地上と上空からの消火活動が困難になる恐れがあるという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中