カナダで気温49℃、森林火災で町の9割が火の海に 火災積乱雲に警戒
バンクーバー・サン紙によると、7月4日午前の時点でも173件の森林火災が同時進行しているようだ。州森林火災局はこのうち42%が制御不能の状態にあり、さらに16%について判断を保留していると発表した。
火災積乱雲の発生で悪循環の危険も
大規模火災特有の気象現象により、状況はさらに悪化する可能性がある。広域で火災が発生すると、高熱による上昇気流によって煙の粒子を含む空気が上空へと吹上げらる。空気中の水分は高度が上がるにつれて冷却されて凝縮し、やがて不純物を含む積乱雲を形成する。「火災積乱雲」と呼ばれる雲の誕生だ。
Absolutely mind-blowing wildfire behavior in British Columbia.
— Dakota Smith (@weatherdak) July 1, 2021
Incredible & massive storm-producing pyrocumulonimbus plumes. pic.twitter.com/kH39IuX1ez
積乱雲は一般に、強力なダウンバーストを発生させることがある。これは、上空で冷やされて重くなった空気が下降気流を形成し、鉛直下方向に強力に吹き付ける現象だ。森林火災の上空で火災積乱雲が形成されると、地面に到達したダウンバーストが炎と燃えさしを周囲に運び、火災を周辺域に広げる恐れがある。ダウンバーストの到達範囲は広く、火災の発生域から数キロないし数十キロ離れた地域にまで及ぶことがあるため、近隣の街では警戒が必要だ。
これに加え、落雷の発生という面でも火災積乱雲は厄介だ。火災積乱雲は2019年にオーストラリア南部のバーンズデールで起きた大規模な森林火災の際にも発生しており、落雷が森林に達すれば新たな野火を招きかねないとして問題視されていた。今回のカナダでも、7月3日までの過去24時間にB.C.州内で99件の森林火災が発生しており、うち7割近くが落雷に起因するものとなっている。
火災積乱雲による雷は、通常の積乱雲よりも大きなエネルギーを長時間かけて放出する性質があるため、落雷による火災を招きやすい。これは、電荷の違いによるものだ。夏季の積乱雲は通常、雲内部に溜まった負の電荷を中和しようとする「負極性落雷」が多い。一方で火災積乱雲は構成粒子の違いにより、逆の「正極性落雷」を発生させることが多い。ひとたび落雷が起きれば高エネルギーにより雷撃点で火災は起きやすく、森林火災と積乱雲が互いを呼び込む悪循環が懸念されている。
B.C.州では現在も火災が継続しており、緊張が続く。州の消防情報官はカナダ放送協会に対し、高気温と空気の乾燥が依然として継続しているため、火災を招きやすい状況が続く見込みだとコメントしている。