メルケル後のドイツを揺るがす「極右に熱狂する」旧東独の反乱
Still Divided After 30 Years
ヘルメナウによれば、AfDは旧東独圏のあらゆる年齢層で平均的に支持を集めている。6月のザクセン・アンハルト州の議会選で、AfDは18~24歳の票の17%を獲得(1位のCDUとの差はわずかだった)。25~34歳では28%を獲得し、他党を圧倒した。
「民主主義になじめない高齢者だけがAfD支持だというのは間違いだ」とヘルメナウは言う。「社会主義など知らない若い世代もAfDに投票している」
しかも東のドイツ人は、一般に特定政党への忠誠心が薄い。そのため票の出方が変わりやすく、それがAfDの躍進を助けてもいる。ヘルメナウは言う。「みんな平気で政党を乗り換える。彼らは(政治を動かす側ではなく)政治を消費する側だと思っている。だから自分の都合で戦術的に投票先を決める」
東部諸州が国政を左右する
総選挙は9月に迫っている。今回も東部5州での勝敗がドイツ国政の行方を左右するのだろうか。ドイツの総人口は8320万。東部5州の人口は1250万にすぎない。つまり数字的には15%にしかならないのだが、政治的には大きな意味を持つ。
各政党の支持率が拮抗しているため、どの政党による連立政権が実現するかは、1つの政党の支持率が数ポイント違うだけで、がらりと変わってしまう可能性がある。
投票結果とは別に間接的な影響も無視できない。昨年、東部チューリンゲン州でCDUの地方議員らが水面下でAfDと協力関係を結んだときは、当時のCDU党首アンネグレート・クランプカレンバウアー(メルケル自身が後継者に指名していた人物)が辞任に追い込まれている。これだけでも、東部諸州の役割がいかに微妙かが分かる。
「数だけ見れば、東部5州の有権者は北西部のノルトライン・ウェストファーレン州よりも少ない」と南ドイツ新聞のガンメリンは言う。「しかし各州で積み上げた議席数が拮抗した場合に、カギを握るのは少数派の票の出方だ」
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