感染拡大のインドネシアは第2のインドの様相 医療システム限界、続々と倒れる医師たち
感染のまん延により、医療機関の運営自体にも危機が迫る。英ガーディアン紙が現地メディアの報道として伝えた情報によると、酸素が底をついたり、医療スタッフが感染により出勤できなくなったりといった事態が相次いでいる。これにより病棟の運営が不可能となり、ICUを一時的に閉鎖する医療機関が出始めている模様だ。ある病院では病棟前の庭をICUに転用するなど可能な限り受け入れを続けているが、必要な医薬がない状態が10日間も続いており、仮に入院できたとしても必要な治療を受けられない状態だ。
倒れる医療スタッフたち ワクチンに疑念も
過酷な状況のなか、前線で働く医療スタッフの負担は甚大だ。医師たちのなかからも、ほぼ毎週のように感染による死者が出ている。ジャカルタのある医師は『news.com.au』に対し、「一緒に働いている人が軒並み倒れていっている」と悲惨な状況を語る。
医師たちは2回のワクチン接種を受けているが、それでも突破感染が止まらない。英テレグラフ紙は、ジャワ島中部の病院において、医師たち15人が感染したと報じている。自身も感染したというある医師は同紙に対し、人手不足で医師たちは過労状態にあり、このような状態ではワクチンを打っていたとしても免疫力が十分に発揮されない、と説明している。
こうした体調の問題とは別に、ワクチン自体の効果も疑問視されている。6月には350人を超える医療関係者が新型コロナで死亡しており、インドネシア医師会はほぼ全員が中国シノバック社のワクチンを接種していたことを明らかにした。英ガーディアン紙は6月末、「インドネシアでのコロナ死でシノバック・ワクチンへの疑念が加速」と報じていた。さらに、インドネシアでシノバック製ワクチンの治験を主導してきた責任者が今月死亡しており、現地メディアは新型コロナが死因だったと報じている。
捉え方は割れており、現地保健省のスポークスマンは、医療関係者はウイルスの脅威にさらされる機会が多いために感染数が多くなっており、ワクチンの効果に問題はないとの見解を示している。一方、実質的に効果の薄い「水ワクチン」ではないかとの疑念が一部でささやかれはじめており、とくにデルタ株に対してはぜい弱だという可能性が指摘されている。
同様の指摘はインドネシア国外からも挙がっている。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、同じくシノバック製を採用するタイはすでに、医療関係者に対してファイザーやアストラゼネカ製などを追加接種する方針を固めたと報じている。
インドネシアのパンジャイタン調整相は今週、仮に最悪の状況に突入したならば、新規感染者数は現状を2万人以上上回り、1日あたり7万人に達するのではないかとの見通しを示した。当面は予断を許さない状況が続きそうだ。