最新記事

クーデター

密林で虐殺された遺体少なくとも10数体発見 軍と武装市民の戦闘激化するミャンマー

2021年7月31日(土)12時43分
大塚智彦
ミャンマー北部カチン州の反政府勢力

ミャンマーの混乱はいつまで続くのか RFA Burmese / YouTube

<突然のクーデターから半年、この国の状況はさらに混迷の度を深めている>

クーデターで民主政権を崩壊させアウン・サン・スー・チー氏やウィン・ミン大統領ら民主政府要人を逮捕、訴追。その一方で反軍政を唱える市民への弾圧を強めているミャンマー軍事政権は8月1日にクーデターから半年を迎える。

実弾発砲を含めたあらゆる人権侵害が反軍政の市民に対して行われているなか、各地で「国民防衛隊(PDF)」という武装した市民による軍との衝突、戦闘が激化しており、サガイン地方では軍とPDFによる激しい戦闘が起きた。

この戦闘で戦禍を逃れるためジャングルに逃れた市民が、掃討作戦を続ける軍に殺害されるケースもあり、同地方カニ郡区付近のジャングルで住民5人の虐殺遺体が発見され、付近には少なくとも10人の遺体が埋まっている可能性があるという。

発見された遺体の中には樹木から吊り下げられた様な明らかに「虐殺」された遺体もあり、軍による「蛮行」「人権侵害」の証拠として国際的な人権団体が厳しく非難する事態となっている。

密林に逃れた市民を軍が虐殺か

米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」が7月28日に伝えたところによると、サガイン地方カニ郡区ジーピントゥイン村近くのジャングルで首をロープで縛られて木に吊り下げられた遺体1体とその近くで遺体4体を住民が発見した。

さらにその付近には遺体を埋めた集団埋葬の形跡が3か所あり、少なくとも10人の遺体があるとみられているものの、周囲に地雷が埋められている可能性があるため、発掘作業は行えない状況が続いているという。

遺体の身元は依然不明だが、うち1人は60代の男性とみられている。この男性は武装市民の組織「国民防衛隊(PDF)」とは無関係のジャングルに避難した一般住民とみられている。

カニ郡区では軍が侵攻してきた7月11日以来、軍兵士と武装市民による戦闘が激化し、多数の犠牲者、行方不明者が出ているといわれており、その安否が気遣われている。

戦闘への巻添えを恐れた一般の住民が付近のジャングルに逃げたが、そこへ武装市民を追跡、掃討する目的の兵士らが追跡し、避難民を発見しては無残な方法で殺害したのが発見された5人の遺体とみられている。

現地のPDF関係者によると、軍が侵攻して一般市民に対して武力行使を始めたことから住民らが周辺地区のPDFに支援を求め、多くの武装市民がカニ郡区に駆けつけて軍と戦闘になったという。しかし駆けつけたPDFも多くが軍による包囲網のトラップにはまり、多くが命を落としたとされている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独GDP改定値、第3四半期は前期比+0.1% 速報

ビジネス

独総合PMI、11月は2月以来の低水準 サービスが

ビジネス

仏総合PMI、11月は44.8に低下 新規受注が大

ビジネス

印財閥アダニ、資金調達に支障も 会長起訴で投資家の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中