最新記事

米ロ関係

「ロシアはもはや地域大国の一つに過ぎない」 バイデンが狙うプーチン包囲網

2021年6月19日(土)11時39分
ジュネーブで米バイデン大統領(右)とロシアのプーチン大統領が首脳会談をした

バイデン米大統領は就任後初となった今回の外遊を通じて、ロシアをことさら小さい存在として印象づけようとした。写真はバイデン大統領(右)とロシアのプーチン大統領。ジュネーブで16日撮影(2021年 ロイター/Kevin Lamarque)

バイデン米大統領は就任後初となった今回の外遊を通じて、ロシアをことさら小さい存在として印象づけようとした。もはや米国にとって対等の競争相手ではなく、米国が中国との覇権争いに資源を注ぎ込みつつある今の世界では単なる「地域大国」の1つにすぎないというのだ。

複数の側近の話では、バイデン氏が送りたかったメッセージは、プーチン大統領が西側諸国に対する選挙干渉やサイバー攻撃、国内の反体制派弾圧といったさまざまな行動を通じて国際社会で自ら孤立している、ということだった。

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は17日記者団に「バイデン氏がプーチン氏に対峙し、彼に強く対抗する分野で、その態度は明確であり、直接的だった。あなた方が公式の場で聞いたことは、バイデン氏が水面下で行ってきた内容が反映されているという側面が非常に強い」と解説した。

ただ一部の専門家は、バイデン氏がロシアを「矮小化」するような発言をしつつ、米国とロシアの関係悪化や核兵器管理問題における対立を食い止めるのは並大抵の取り組みではないだろうとみている。

トランプ前政権で国家安全保障会議メンバーだったティム・モリソン氏は「バイデン政権は緊張緩和を望んでいる。私からすると、果たしてプーチン氏もそうなのかは分からない。プーチン氏が切れるカードは、秩序を乱す役割を演じることだけだからだ」と指摘する。

バイデン氏は政権発足当初から、プーチン氏を繰り返し「殺人者」と呼び、その後両国が大使を本国に引き揚げさせるほど外交関係が悪化する事態に発展。16日のジュネーブにおけるバイデン氏とプーチン氏の首脳会談前に両国高官の間で大きな進展があるとの見方は乏しく、案の定具体的な成果はゼロだった。それでも両氏は、核軍縮やサイバー攻撃を巡る対話を再開し、協力できる分野に目を向けると約束。最近はほとんど歩み寄る場面がない両国関係の今後に多少の希望をのぞかせた。

一方でバイデン氏は首脳会談後、ロシアについて「超大国にとどまろうと必死になっている」と描写。またジュネーブへ向かう大統領専用機に乗り込む前には「ロシアは今、大変厳しい立場にあり、中国に圧迫されつつある」とも述べ、彼らは「核兵器を持つアッパーボルタ(現ブルキナファソ)」として認知されるのを嫌っている、とからかいの言葉を口にした。これはかつて旧ソ連がロケットを持つアッパーボルタと呼ばれ、内実は第三世界の国家にすぎないとこき下ろす声があったことを踏まえたとみられる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ南部、医療機関向け燃料あと3日で枯渇 WHOが

ワールド

米、対イスラエル弾薬供給一時停止 ラファ侵攻計画踏

ビジネス

米経済の減速必要、インフレ率2%回帰に向け=ボスト

ワールド

中国国家主席、セルビアと「共通の未来」 東欧と関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中