「ロシアはもはや地域大国の一つに過ぎない」 バイデンが狙うプーチン包囲網
バイデン米大統領は就任後初となった今回の外遊を通じて、ロシアをことさら小さい存在として印象づけようとした。写真はバイデン大統領(右)とロシアのプーチン大統領。ジュネーブで16日撮影(2021年 ロイター/Kevin Lamarque)
バイデン米大統領は就任後初となった今回の外遊を通じて、ロシアをことさら小さい存在として印象づけようとした。もはや米国にとって対等の競争相手ではなく、米国が中国との覇権争いに資源を注ぎ込みつつある今の世界では単なる「地域大国」の1つにすぎないというのだ。
複数の側近の話では、バイデン氏が送りたかったメッセージは、プーチン大統領が西側諸国に対する選挙干渉やサイバー攻撃、国内の反体制派弾圧といったさまざまな行動を通じて国際社会で自ら孤立している、ということだった。
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は17日記者団に「バイデン氏がプーチン氏に対峙し、彼に強く対抗する分野で、その態度は明確であり、直接的だった。あなた方が公式の場で聞いたことは、バイデン氏が水面下で行ってきた内容が反映されているという側面が非常に強い」と解説した。
ただ一部の専門家は、バイデン氏がロシアを「矮小化」するような発言をしつつ、米国とロシアの関係悪化や核兵器管理問題における対立を食い止めるのは並大抵の取り組みではないだろうとみている。
トランプ前政権で国家安全保障会議メンバーだったティム・モリソン氏は「バイデン政権は緊張緩和を望んでいる。私からすると、果たしてプーチン氏もそうなのかは分からない。プーチン氏が切れるカードは、秩序を乱す役割を演じることだけだからだ」と指摘する。
バイデン氏は政権発足当初から、プーチン氏を繰り返し「殺人者」と呼び、その後両国が大使を本国に引き揚げさせるほど外交関係が悪化する事態に発展。16日のジュネーブにおけるバイデン氏とプーチン氏の首脳会談前に両国高官の間で大きな進展があるとの見方は乏しく、案の定具体的な成果はゼロだった。それでも両氏は、核軍縮やサイバー攻撃を巡る対話を再開し、協力できる分野に目を向けると約束。最近はほとんど歩み寄る場面がない両国関係の今後に多少の希望をのぞかせた。
一方でバイデン氏は首脳会談後、ロシアについて「超大国にとどまろうと必死になっている」と描写。またジュネーブへ向かう大統領専用機に乗り込む前には「ロシアは今、大変厳しい立場にあり、中国に圧迫されつつある」とも述べ、彼らは「核兵器を持つアッパーボルタ(現ブルキナファソ)」として認知されるのを嫌っている、とからかいの言葉を口にした。これはかつて旧ソ連がロケットを持つアッパーボルタと呼ばれ、内実は第三世界の国家にすぎないとこき下ろす声があったことを踏まえたとみられる。