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政治家・菅義偉の「最大の強み」が今、五輪の強行と人心の離反を招く元凶に

An Exit Plan

2021年6月16日(水)19時24分
北島純(社会情報大学院大学特任教授)

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安倍晋三復活を仕掛ける(2012年) TOMOHIRO OHSUMI-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

しかし、菅氏は裏方に徹する政治家というわけでもない。第3次小泉改造内閣で竹中平蔵総務相を支える総務副大臣に着任し、06年9月に第1次安倍政権が発足すると、菅氏はそのまま昇格する形で総務相として初入閣。今度は自らが表に出て、NHK改革やふるさと納税導入に取り組む。ほかの族議員を差し置き、絶大な影響力を有するようになった菅氏は総務省という「庭」に君臨する存在になった。

菅氏の政策実現手法は、徹底した情報収集によって支えられている。官房長官時代に数多くの実業家、大学教授、ジャーナリストらと会食をこなすことで有名だったが、そのような人的情報と並んで、細部に宿る具体的な数字を重視すると言われている。それは情報の網羅性と詳細性こそが、政策課題への最適な対応と実現可能性を担保するからであり、また専門家の意見に耳を傾ける姿勢は梶山静六仕込みの党人派としての知恵でもあろう。

詳細な情報収集の末に課題解決の目星がつき、菅氏本人が腹をくくると、それから先は脇目も振らずに結果達成に向けて行動が始まる。それはあたかも、大学時代に菅氏が打ち込んだ空手の「型」のようだ。

決断前の段階では議論と再考の余地は残る。しかし一度決断がなされた後は、意思の貫徹と結果必達に焦点は絞られ、それまでに収集された情報や検討された議論が蒸し返される余地はほとんどない。

やると決めたら不退転の既定方針に

高齢者向けワクチン接種を7月末までに完了させると決めたら、あるいは東京五輪を開催すると決めたら、いずれも不退転の既定方針となる。官房長官時代の菅氏の逆鱗に触れた霞が関官僚の多くは、菅氏の中でフェーズが転換したポイントを見誤った人々だ。

こんなエピソードもある。菅氏は初当選した直後の国会で創価学会を批判していたが、小選挙区選挙では連立与党を組む公明党の選挙協力は欠かせない。情勢と時代の変化をつかんで、菅氏はいつの間にかに親・創価学会に転じ、佐藤浩・現副会長らとの間に太いパイプを構築した。

総務省が「いつの間にか」自家薬籠中の物となったこと、創価学会との間で「いつの間にか」太いパイプが構築されたことだけを見れば、単なる偶然か成り行きの結果ということもできよう。

しかし無派閥議員だった菅氏は安倍長期政権の中で、「いつの間にか」に鳩山邦夫創設のきさらぎ会やガネーシャの会、令和の会などを従えるようになり、昨年8月の安倍首相退陣表明後のわずか4日間で主要5派閥の支持を取り付け、圧勝した。

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