8野党連立でイスラエル政権交代、ネタニヤフを追い込んだ男と、実権を握る別の男
Bibi Is Dethroned
ベネットは一貫して入植地建設の先頭に立ち、ユダヤ人の宗教的・歴史的大義を信じて疑わない人物。だから今回のように主義主張の異なる勢力との連立に加わるのは自分の人生で「最も難しい」決断だったと述べている。
一方、何としても政権を維持したいネタニヤフは5月30日の演説でベネットを激しく非難し、この連立工作は「世紀の詐欺」だと非難した。
ネタニヤフ周辺はベネットらを「裏切り者」と呼ぶ。命の危険を感じたベネットと側近のアイエレット・シャクドは身辺警護を強化した。現に彼らの家には右派の活動家が押し掛け、ネタニヤフへの忠誠を要求している。
与党リクードのある議員は先日、国内メディアに「これは政権の移行ではない。政権強奪だ」と語っている。ネタニヤフ陣営からすれば、そう言うしかない。今やネタニヤフが生き残るための唯一の道は、シャクドを含むヤミナの議員を切り崩し、中道・左派の大連立を過半数割れに追い込むことしかない。
ラピドをはじめとする野党連合はネタニヤフの言動を非難し、そうやって社会の分断をあおり続ければ今年1月6日にアメリカで起きた議会乱入のような暴力的事態を招くだろうと警告する。
「異論を唱える者を敵と決め付けるのは間違いだ」とラピドは言う。「私たちの政権ができれば、キーワードは責任だ。......平穏を取り戻し、他人を非難せず、身内の敵を探すのをやめ、考え方の違う者に裏切り者のレッテルを貼って殺すこともしない」
連立合意に従えば、まずはベネットが首相になる。だが次の首相のラピドはベネットの決定に拒否権を行使できる(逆もまたしかり)。そうであれば、実権を握るのは経験豊富なラピドだろう。
実際、連立に応じた各政党との最終合意を取りまとめているのはラピドだ。なにしろラピドの率いる最大野党イェシュ・アティドは、どの連立会派とも比べものにならない議席を持つ。それでも彼は右派のベネットを立てて、最初の首相の座を譲った。
「(ネタニヤフ政権を終わらせるために)必要なことは何でもすると私たちは言ってきた。だから、そのとおりにした」。ラピドの側近は匿名を条件に、そう語っている。
ネタニヤフが連立の鍵?
一方、首相の座を約束されたベネットの前途は厳しい。「右派からは見放され、議会にいる仲間は6人のみ。予想される閣僚中には彼より年長で経験豊富な人もいて、彼を軽蔑している」と、雑誌リベラルのダノンは言う。