最新記事

イスラエル

8野党連立でイスラエル政権交代、ネタニヤフを追い込んだ男と、実権を握る別の男

Bibi Is Dethroned

2021年6月7日(月)16時30分
ネリ・ジルベル(中東ジャーナリスト)

主義も主張も異なる8政党の連立がいつまで続くかは疑問だ。イスラエル議会の議席総数は120だが、野党連合の議席は61のみ。そうであれば面倒な問題にはふたをして、まずは経済や医療、教育など合意の得やすい政策課題に取り組むしかあるまい。

「イデオロギーを捨てろとは言わない、だが自分の夢の実現は少し先送りしてくれ」。ベネットは連立発表時にそう呼び掛けた。「無理なことを議論するのはやめて、実現できる課題に力を入れよう」

皮肉なもので、ネタニヤフが手段を選ばず政権にしがみついてきたからこそ、今回の大連立は可能になった。そしてネタニヤフが今後も政界から引退しないなら、この連立もどうにか維持できよう。

タイムズ・オブ・イスラエル紙の政治記者タル・シュナイダーは言ったものだ。ネタニヤフは「おそらく新政権がすぐに崩壊すると考え、5回目の選挙での復活勝利に備えているはずだ」と。「彼はそのつもりだ。......だから自分の仲間以外には、国にとっての危険分子だというレッテルを貼りたがる」

そうかもしれない。だが順調にいけば、ラピドとベネットは悪名高いネタニヤフ長期政権を倒すことができる。それは今まで多くの政治家がトライしても成し遂げられなかった大きな成果だ。

ネタニヤフは「自分を売り込むのにたけた男」だと、ラピドは今年3月に語っていた。

「私の真ん中の息子が生まれたのは1995年で、その7カ月後にネタニヤフは首相になった。その後、息子は軍隊に入り、任務を終え、婚約し、婚約を破棄し、大学に入り、もうすぐ卒業する。それでもまだ、首相はネタニヤフ」。それでいいのか、と。

今のネタニヤフは腐敗の深みにはまっている、ともラピドは言った。もう終わらせよう。「権力の座に長く居座るのは悪。それは人類の歴史が証明している」

From Foreign Policy Magazine

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

メキシコ大統領、強制送還移民受け入れの用意 トラン

ビジネス

Temuの中国PDD、第3四半期は売上高と利益が予

ビジネス

10月全国消費者物価(除く生鮮)は前年比+2.3%

ワールド

ノルウェーGDP、第3四半期は前期比+0.5% 予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中