最新記事

中国

「安心安全な五輪」より「安心安全な国民生活」を!

2021年6月5日(土)20時12分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

沖縄でも今年の5月の連休に多くの観光客が押しかけたために新規感染者が激増し、入院ベッド数は許容量を超えてしまって、医療崩壊を起こしかけている。

それでもなお、東京五輪開催に突入しようと言うのか?

全世界から、どのような種類のコロナウイルスを潜在的に持っているか分からない10万からの人たちが来日する。日本人の人流も増えるだろう。ということは感染の再拡大を起こす可能性を十分に秘めていることになるのは誰の目にも明らかだろう。

菅内閣にとっては、日本国民の命より、東京五輪開催が重要なのだろうか?

東京五輪開催に習近平がエールを送るという「シグナル」を読み間違えるな

習近平が東京五輪開催を支援している理由に関しては5月26日付のコラム<バッハ会長らの日本侮辱発言の裏に習近平との緊密さ>や5月28日のコラム<バッハとテドロスは習近平と同じ船に:漕ぎ手は「玉砕」日本>などでくり返し書いてきたように、万一にも東京五輪が中止になったら「コロナ感染」が大きくクロースアップされて、習近平にとって不利になるからだ。もちろんそれは2022年2月の北京冬季五輪ボイコットへとつながる可能性もあり、習近平としては何としても避けたいところだ。だからこそ東京五輪開催を習近平が支援しているというのに、それを勘違いしている人々が少なからずいる。

たとえば6月5日の<「中国包囲網」「東京五輪」G7サミットのキーパーソンは間違いなく菅首相である>という報道があるのを見て驚いた。もし東京五輪開催を強行突破しようとしている主催者側にも類似の勘違いがあるとすれば、それは是非とも是正してほしいと切望する。

東京五輪開催は決して中国にダメージを与えて日本が勝利を収める性格のものでなく、全くその正反対の役割を果たすことになる。

東京五輪を政治化しないように

いずれにしても、日本国民のために感染病の専門家たちが科学的分析をして、その結果を公表して下さることを心から期待している。

東京五輪を政治化して、日本国民の命をないがしろにするのはやめて頂きたい。

ましてや選挙の時期に照準を当てながら、国民の命をもてあそぶようなことは、絶対にあってはならない。

それを食い止める力が国民にあるのが民主主義国家なのではないだろうか。


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら

51-Acj5FPaL.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

衣料ネット通販ザランド、25年の増収増益を予想 事

ビジネス

ヨーカ堂などの統括会社、3年程度での上場を目指す=

ビジネス

アングル:長期金利16年ぶり1.5%超、悪い金利上

ビジネス

独物流大手DHL、8000人削減へ 11億ドルのコ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行為」「消費増税」に等しいとトランプを批判
  • 4
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 5
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 10
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 8
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中