「安心安全な五輪」より「安心安全な国民生活」を!
以下に、五輪延期を決定した時期と「Go Toトラベル」および「第1次~第3次緊急事態宣言」に注目した新規感染者数と新規死者数の推移に関する推移を示す。青の■は新規感染者数、赤の■は新規死者数である。
日本政府が発表しNHKがまとめているデータを基に筆者が作成
「赤い矢印」で示したのは2020年3月24日に「東京五輪延期を決定した日時」である。あの時は新規感染者数も新規死者数も、絶対数から言えば現在と比べて桁違いに少なかった。それでも増加傾向にあることから延期を決断したわけである。
案の定、増加し始めたので「2020年4月6日」に「第1次緊急事態宣言」が出された。それでもしばらくの間は増加傾向が続き(新規感染者数のピークは4月11日の720人もしくは4月18日の588人)、5月25日なって、ようやく緊急事態宣言が解除された。
ウイルスの宿主は人間で、人間が移動し接触機会が多くなれば当然のことながら感染が拡大する。だというのに何と政府は、わざわざ国民の税金を注ぎ込んで「さあ、動きなさい。動いたら奨励金を出しますよ」と言わんばかりに「Go To トラベル」政策などを推進したので、一気に感染者数が激増し、新たなフェーズへと突入した。それでも利権が絡んでいる一部議員の強力な抵抗により、なかなか「Go To トラベル」政策にストップを掛けないので、感染拡大は後戻りができないところまで発展してしまった。ようやくストップしたのは5カ月後の2020年12月28日だ。
その悪影響は計り知れず、2021年1月7日に発布した第2次緊急事態宣言も、新規感染者数や新規死者数の絶対値が東京五輪延期決定の時のそれぞれ106.1倍(7642/72)および64倍(64/1)になっているにもかかわらず、3月21日には解除してしまった。当然のことながら、まだdecay(減衰)していないのだから、また増える。
今年4月25日から第3次緊急事態宣言が発せられたが、それは延期されたまま、いつ解除して良いのか確定はしていない。一応6月20日となっているが、その時にどういう数値であるならば解除できるのかに関する専門家集団の科学的シミュレーションに基づいた分析が欲しい。
「安心安全な東京五輪」より「安心安全な日常」を!
このような中で、東京五輪に何としても突き進んでいこうとする菅内閣は、日本国民の命など「政治の道具」としか見ていないという印象を国民に与える。
筆者の友人のご親族も、入院先のベッド数と医療従事者の許容限界を超えているという理由で(さらにはおそらく「高齢者なのでいずれ死ぬ」という「命の選択」も背後にあり)自宅療養を強要されてコロナ感染したまま亡くなられたばかりだ。