最新記事

中東

イスラエル野党が連立で合意、アラブ系政党も参加へ ネタニヤフ退陣に近づく

2021年6月3日(木)11時18分

イスラエルの連立政権発足を目指す野党の交渉は、中道「イェシュアティド」と「青と白」を含む複数の政党の間で合意がまとまり、組閣に向けて前進した。写真は中道イェシュアティドのラピド党首(右)と右派党「ヤミナ」のベネット党首(2021年 ロイター/Ronen Zvulun)

イスラエルの中道野党「イェシュアティド」のラピド党首は2日、連立政権発足で複数政党と合意したとリブリン大統領に正式に報告した。12年連続で首相を務めるネタニヤフ氏が、退陣に追い込まれる可能性が強まった。

党の発表によると、ラピド氏は2日深夜の組閣期限の約30分前に「組閣に成功した」と大統領に報告した。大統領は祝意を伝えたという。

政権が発足すれば、主要な連立相手となる右派「ヤミナ」のベネット党首が「輪番制」の下でまず首相に就き、約2年後にラピド氏に交代する見通し。

連立政権は中小の幅広い政党で構成され、同国史上初めてアラブ系政党も参加する。

このほかベネット氏のヤミナ、ガンツ国防相が主導する中道左派の「青と白」、左派の「メレツ」と「労働党」、リーベルマン元国防相が率いる極右「わが家イスラエル」、ネタニヤフ氏の「リクード」を離党したサール元教育相の右派政党「新たな希望」が加わる。

ただ、新政権は国会(定数120)でわずかに過半数を上回る不安定な状況で、宣誓就任は約10─12日後になる見通しだ。それまでにネタニヤフ氏側が議員に反対票を投じるよう説得を試みる可能性もある。

専門家は、アラブ系政党や左派との連立に不満を抱くヤミナの議員に翻意を促すなど、ネタニヤフ氏があらゆる手を尽くして抵抗するとみている。

現地紙ハーレツの政治アナリストは、ツイッターへの投稿で「信任投票まで数日間、ネタニヤフ氏はまだ首相だ。新政権が過半数を確保できないよう、同氏は徹底抗戦するだろう。まだ終わりには程遠い」との見方を示した。

ラピド氏はツイッターで「(新政権は)票を投じた人も投じなかった人も含め、全てのイスラエル市民のために働く。野党を尊重し、社会全体の結束のために全力を尽くす」と表明した。

ガンツ氏は「大きな希望の夜だ」とツイートした。連立合意の下、同氏は国防相にとどまるという。

イスラエルでは過去2年に4回の総選挙が実施された。ネタニヤフ氏の退陣で政治の混乱が落ち着く可能性もあるが、同国の外交政策の大幅な転換につながる公算は小さいとみられている。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、国有企業に国際取引の元建て決済促す 元の国際

ワールド

ローマ教皇フランシスコ死去、88歳 初の中南米出身

ビジネス

IMF・世銀会合、「関税」一色に 二国間交渉が焦点

ワールド

イラン外相、22日に中国訪問 米国との核交渉巡り協
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボランティアが、職員たちにもたらした「学び」
  • 3
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投稿した写真が「嫌な予感しかしない」と話題
  • 4
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 5
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 6
    遺物「青いコーラン」から未解明の文字を発見...ペー…
  • 7
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 8
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 9
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 10
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 9
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 10
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中