中国広州で発生したコロナ新規感染者への対処に見る中国の姿勢
2021年5月に中国広州市でコロナ新規感染者が発生し、PCR検査を受ける住民 cnsphoto/REUTERS
広州市で新規感染者が数名出ると、周辺220万人全員にPCR検査をし、感染者の足跡をスマホで公開して一気に阻止に向かおうとしている。片や日本政府には何としてもコロナを阻止して見せるという意気込みが見られない。
新規感染者を発見した経緯
5月18日、最初の新規感染者と見られる中国広東省の広州市茘湾(リーワン)区に住んでいた「患者1」は、体調不良のため風邪薬を服用した。翌19日には近所の「又一間茶点軒」という店で「早茶(ザオ・ツァー)」(お茶を飲みながら取る軽い朝食)をした。
5月20日の午後、どうも変だと思って徒歩で発熱検診に行ったところ、PCR検査を受けた。その夜、初歩的段階で「コロナ陽性」と判明。翌21日、本格的な検査の結果「コロナ陽性」と確定し、「患者1」は隔離治療に入った。
一方、「患者3」(おばあちゃん)は孫の「患者4」(小学生)を連れて25日に病院に行った。孫が発熱したので病院に行ったのだが、PCR検査をしたところ「コロナ陽性」だったので、「おばあちゃん」も検査したところ、やはり陽性だった(注:「患者2」は一連の新規感染者とは経路が異なるため、ここでは省く)。
「患者3」は、5月19日に、「患者1」と同じ店で「早茶」を取っていたことが分かり、この店でクラスターが発生した可能性があるとして、保健衛生当局が5月26日、27日の2日間で、茘湾区の住民120万人に対してPCR検査を行った。茘湾区の人口は約120万人なので、ほぼ全員に対してPCR検査をしたことになる。
感染者がさらに数名増え始めたので茘湾区のすぐ隣にある海珠区の100万人全員に対しても5月30日から6月1日にかけてPCR検査を行ったので、合計で220万人に対し検査を完了させた。その結果、無症状者も含めて、「コロナ陽性」は6月1日朝までのデータで24人に上る。
新規感染者の足跡をスマホで公開
さらなる濃厚接触者を特定するため、匿名ではあるが当局は患者の行動範囲や軌跡を追跡し、テンセントやアリババなどのIT企業のアプリで公表している。日本人には馴染みが薄いと思われるが、最も信用できるのが「今日頭条」というサイトで、ここではコロナに関しても全てをフォローすることができる。
たとえば患者が行った場所、クラスターが発生した場所などが、以下のようなマップで示されている。
ウェブサイト「今日頭条」に載っている感染者の足跡
この場所に近づくとスマホのアラームが鳴り、警告を出してくれる。
たとえば以下の情報は、筆者が日本からアクセスしたので、「あなたは警戒点から何キロ離れています」という情報が数字で示される。
「今日頭条」に載っている、警戒点からのスマホ使用者の距離
ネット回線確保と封鎖による物資配給体制
1日50万人以上の検査に対応できるようにするため、ネット回線の確保に力を入れ24時間体制で稼働させている。