バイデン対中制裁59社の驚くべき「からくり」:新規はわずか3社!
判決では「シャオミーの株価がリストへの追加以降9.5%下落したことなどにより、既に回復不能な損害を受けていると判断される」と説明していた。
実際のところは、たとえば中国の「証券時報網(網:ウェブサイト)」に示されているようにシャオミーの株の多くはアメリカの外資系証券会社が持っており、たとえばJPモルガンは12.35%、シティバンクが10.22%、モルガン・スタンレーが2.34%となっており、3社の合計保有比率は24.91%に達している。ほかにもイギリスのロンドンに本社を置く世界最大級の証券会社であるHSBCが27.01%、スイスに本社を置く証券会社UBSグループが5.16%を占めており、制裁によって困るのは欧米であり、中国ではないという事情もあった。
結果、5月12日にバイデン政権下の国防総省は、シャオミー をブラックリストから除外すると宣言した。
ということは、5月12日の時点で、バイデン政権の「対中融和策」が垣間見えるという状況だったと言えよう。その流れの中に劉鶴とキャサリン・タイおよびジャネット・イエレンとのリモート対談が実現していたわけだ。
以上の3点から、6月3日の「中国企業59社に対する投資禁止令への署名」には「何かおかしい」、「何かある」という直感が働いたのである。
「インチキ」にも近い、驚くべきブラックリストの「からくり」:新規追加は3社のみ!
この直感は、驚くべき形で解答を運んできてくれた。
まず、トランプ政権時代とバイデン政権におけるブラックリストを拾い上げ、バイデン政権になってから「新たに追加された制裁企業」は具体的に何という企業で、それが国有や地方政府の公営なのか、それとも民営企業なのか、そしてその中に外部資本がどれだけ入っているかをチェックしてみようと思ったわけだ。
しかし、そのようなものを一覧表にした情報はどこにもなく、やむなくバイデン大統領が署名したときの情報をホワイトハウスのブリーフィングルームにある"Executive Order on Addressing the Threat from Securities Investments that Finance Certain Companies of the People's Republic of China"(中華人民共和国の特定の企業を資金源とする証券投資からの脅威に対処するための大統領令)から拾い出し、それをトランプ政権時代のリストと比較しようとした。
トランプ時代は制裁対象者を国防権限法(NDAA)に基づいて決定していたが、今年6月3日の行政命令で今後は全て財政部(The Secretary of the Treasury)がリストを決定することに変更された。そのためトランプ時代のリストは、国防総省にある。
そこで2021年1月14日、トランプ退陣の一週間前に発表された国防総省のサイトにある"DOD Releases List of Additional Companies, In Accordance with Section 1237 of FY99 NDAA"(国防総省がFY99 NDAA第1237条に基づき、追加企業のリストを発表)からトランプ政権時代の制裁対象企業を拾い上げることにした。