家族のケアで勉強する時間もない「ヤングケアラー」の中高生は全国で4万5000人
家族のケアで勉学に支障が出るような事態は許されない Milatas/iStock.
<自分をヤングケアラーと自覚せず、他人に相談するほどではないと思い込んでいる生徒が多い>
最近、ヤングケアラーが注目を集めている。幼き介護者のことで、家族の世話をしている子どものことをいう。病気の親・祖父母の介護をしている子、幼い弟妹の世話をしている子などがイメージされる。数としては後者が多いだろう。
昔は、こういう子どもはたくさんいた。生産力が低い時代では子どもも立派な労働力で、下の兄弟の世話を大人同様に任されていた。明治時代の初期、子どもを学校にとられてはたまらないと、各地で「学校焼き討ち」が起きていたのはよく知られている。
だが現在では、子どもが教育を受ける権利は法律で規定され、その妨げとなる児童労働は制約されるようになっている。家族のケアも同じだ。人間形成に寄与する面があるとはいえ、勉学に支障が出るような事態は許されない。
今年3月にヤングケアラーの初の実態調査の結果が公表された。国が三菱UFJの研究所に委託した調査で、全国の中学校2年生(5558人)の回答を分析したところ、以下の数値が出たと報告されている。
・世話をしている家族がいる......5.7%
・このうち、宿題や勉強をする時間がない......16.0%
いずれもメディアで大々的に報じられた。この2つを使って、調査対象となった中学校2年生の組成を描くと<図1>のようになる。
横軸は、世話をしている家族がいるかどうかだ。いる生徒は5.7%で、右側の群が該当する。このグループのうち、宿題や勉強の時間もないという生徒は16.0%で、縦軸の比重でこれを表す。
世話をする家族がいるヤングケアラーで、かつ勉強の時間もとれないという生徒は、<図1>の赤色のゾーンということになる。全数ベースの比率は、5.7%と16.0%をかけ合わせて0.91%ということになる。110人に1人だ。