最新記事

日本社会

家族のケアで勉強する時間もない「ヤングケアラー」の中高生は全国で4万5000人

2021年6月2日(水)11時15分
舞田敏彦(教育社会学者)

2020年5月時点の中学生は321万人ほどで、上記の比率をこの全数にかけると結構な数になる。家族の世話で勉強もできない生徒は、見積もり数でどれほどいるか。<表1>に、掛け算の結果を示す。全日制高校2年生(7407人)の回答をもとにした高校生の結果も添える。

data210602-chart02.png

現実の母数に調査から得られた比率を適用すると、家族ケアで勉強もできないという中学生は2.93万人と見積もられる。高校生は1.61万人で、合わせて4.5万人ほどにもなる。

家族の世話で勉強に支障が出ている中高生は4.5万人。法が定める教育を受ける権利、健やかに育つ権利を侵害されている子どもたちだ。人為的な支援が必要なのは明らかで、ヘルパーの派遣やSNSを使った相談窓口の整備などが提言されている。埼玉県では既に、ケアラーの支援条例を独自に定めている。

ただ支援というのは、当事者からSOSがないと発動しにくい。しかし上記の調査結果を見ると、自分をヤングケアラーと自覚している者は少なく、他人に相談するほどではないと思い込んでいる生徒が多い。これでは支援の網から抜け落ちてしまう。「ヤングケアラー」という言葉の認知度も低く、中高生の8割以上が「聞いたことはない」と答えている。まず始めなければならないのは、この言葉を知らしめることだ。

<資料:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「ヤングケアラーの実態 に関する調査」(2021年3月)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、民主党のNY新市長に協力姿勢 「少しは

ワールド

米オープンAI、IPO観測を否定  CFO「当面選

ワールド

イスラエル、ハマスから新たな遺体返還受ける ガザで

ワールド

米共和党、大統領のフィリバスター廃止要求に異例の拒
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇の理由とは?
  • 4
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 5
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 8
    若いホホジロザメを捕食する「シャークハンター」シ…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中