最新記事

ウイルス起源

武漢研究所は長年、危険なコロナウイルスの機能獲得実験を行っていた

Exclusive: How Amateur Sleuths Broke the Wuhan Lab Story

2021年6月4日(金)22時30分
ローワン・ジェイコブソン
武漢ウイルス研究所

厳戒態勢(写真は今年2月、WHOの調査団が訪ねたときの武漢ウイルス研究所) Thomas Peter-REUTERS

<パンデミック発生以来、世界は新型ウイルスは動物から自然発生した、と信じ込まされてきた。だがアマチュアネット調査団「ドラスティック」の活躍で、風向きは大きく変わった。ドラスティックの発見を知った主要メディアが、新型コロナの始祖ウイルスが発見されたとみられる雲南省の鉱山へ取材に向かったのだ>

※前編はこちら:「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団、新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!

......最初に現地入りを試みたのはBBCのジョン・サドワース記者。数台のトラックと治安要員に行く手を阻まれ、鉱山には近づけなかった(サドワース記者はその後まもなく中国当局に記者証を取り上げられ国外退去を命じられた)。ほぼ同時期にAP通信の記者も試み、NBC、CBC、USAトゥデーなど他のメディアも後に続いたが、トラックや丸太、怒った村人たちなどに妨害され、いずれも現地入りを果たせなかった。野生の象が暴れまわっているので危険だと脅された記者もいた。ウォール・ストリート・ジャーナルの記者がマウンテンバイクで何とか鉱山の入り口までたどり着いたが、即座に拘束され、5時間も尋問される羽目になった。

鉱山の謎は残されたままだった。

2020年5月にシーカーが最初にこの大発見をツイートしたとき、主要メディアの反応はまだまったく鈍かったが、DRASTICのほうには新メンバーが加わり、情報収集能力も増して、ウイルスの遺伝子研究から病原体を扱う研究所の安全基準まで、あらゆる事柄を網羅できるようになった。

武漢研究所を数独に見立てる

2020年5月21日にメンバーの1人ビリー・ボスティクソンがグループをDRASTICと命名。さらにグループ全体をいくつかのサブグループに分け、それぞれ専門的なテーマで調査を進める体制を整えた。ほどなく新たな調査結果が次々に投稿されるようになり、武漢の研究所が関与した疑いがますます濃厚になった。

重要な役割を果たしたメンバーの1人が、スペインの首都マドリード在住のデータ科学者でビッグデータの解析を専門とするフランシスコ・デ・アシス・デ・リベラだ。武漢の研究所は長年、さまざまな場で、さまざまな形式を使い、ウイルス収集プロジェクトに関する膨大な情報を発信してきた。リベラはそれを「巨大な数独パズル」に見立て、パズルを解く要領でブランクを埋めて、武漢の研究所のウイルス計画の全体像を明らかにする作業に取り掛かった。

リベラとシーカーは最強のコンビだった。シーカーがパズルの新たなピースを掘り出し、リベラがそれを収まるべき場所に置く(「僕とフランシスコは、刑事ドラマ『ザ・ワイヤー』のマクノルティと相棒のフリーモンみたいなコンビだね」と、シーカーは本誌宛のテキストメッセージでジョークを飛ばした)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中