建党100年、習近平の狙い──毛沢東の「新中国」と習近平の「新時代」
7月1日には建党百周年を迎える中共中央総書記・習近平 Aly Song-REUTERS
建党100周年と米中覇権の分岐点に遭遇した習近平は、そのタイミングを最大限に利用して、毛沢東の「新中国」と習近平の「新時代」という二つの「新」に中国を区分し、一党支配体制の維持と対米勝利を狙っている。「父を破滅に追いやった鄧小平を乗り越える」結果が付随するのが、内心の狙いでもあろう。
「新中国」を建設した毛沢東
1949年10月1日に毛沢東が天安門の楼上で「中華人民共和国」誕生の宣言をした時には「今天、中華人民共和国成立了!(今日、中華人民共和国が成立した!)」と表現した。
天地に鳴り響き、大地を揺らさんばかりの熱狂が全中国を包んだ。
このとき人民は「中華人民共和国万歳!」とは叫ばなかった。叫んだのは、
新中国万歳!
毛主席万歳!
中国共産党万歳!
中国人民解放軍万歳!
である。
なぜなら、新しい国名に関して、「中華人民共和国」とするのか、それとも「中華人民民主共和国」にするか、はたまた「中華人民民主国」にする方がいいかなど、多種多様な意見が出ていたからである。
6月21日のコラム<中国共産党建党100周年にかける習近平――狙いは鄧小平の希薄化>にも書いたように、毛沢東は「新民主主義」を唱えていたので、建国当時は多党制で、現在の政治協商会議に相当するものが政府を構成していた。
それくらい「民主」にこだわったために、必ずしも「中華人民共和国」という国家の呼称が行き渡らず、誰もが「新中国」と熱狂的に叫んだ。私の頭の中にも「新中国」という「音」が浸み込んでいる。
別の角度から見れば、中国が言うところの「民主」が何を意味しているか、特に香港問題などに関しては、この「言葉の定義」に騙されてはいけない。
憲法に書き込んだ習近平の「新時代」
それはさておき、習近平は2017年10月に開催された第19回党大会で「習近平の新時代中国特色ある社会主義思想」を唱え、党規約に書き込んだだけでなく2018年3月に開催された全国人民代表大会で憲法改正を行い、憲法にも書き込んだ。
この「新時代」は「新中国」と「対」を成すもので、
毛沢東――新中国
習近平――新時代
と、中国という国家、あるいは中国共産党の歩みを「毛沢東と習近平」によって二つに分類するという考え方に基づく。
だから、上記のコラム<中国共産党建党100周年にかける習近平――狙いは鄧小平の希薄化>に書いたように、中国共産党歴史展覧館の第一部分と第二部分が毛沢東で、第四部分とこれからの「10年あまり?」は習近平によって描かれるという道筋になっている。