中国「激怒」の制裁再び? 韓国・文在寅を追い詰めるTHAAD増強計画
Upgrading South Korean THAAD
THAADの追加配備には、最初に配備されたときと同様の韓国世論の反発が予想される(2017年9月、慶尚北道星州郡) YAO QILINーXINHUA/AFLO
<2016年に中韓関係に大打撃を与えたミサイル迎撃システムが増強されつつある。文在寅は苦しい板挟みに>
朝鮮半島におけるTHAAD(高高度防衛ミサイル)の配備は、中国と韓国を対立させてきた。中国は、米軍が開発した地上配備型ミサイル迎撃システムであるTHAADが、中国のICBM(大陸間弾道ミサイル)を無力化することを懸念しているのだ。
韓国とアメリカは、THAADはあくまで北朝鮮のミサイルに対抗することが目的だと主張してきた。THAADのレーダーは探知距離が1000キロで、敵ミサイルの発射直後に探知する前進型ではなく、大気圏に再突入するときに迎撃する終末型であり、中国のICBMは探知できない。
だが、最近の米国防総省の報告書は、このレーダーをわずか8時間で前進型に変えて、探知距離3000キロ、視野角120度に拡張できることを明らかにした。
韓国のTHAADは慶尚北道星州郡にある。発射台は全部で6基あり、それぞれにレーダーと8発の迎撃ミサイルが備えられている。
今、このシステムのアップグレードが進んでいるようだ。在韓米軍のロバート・エイブラムス司令官が、3月に行われた米下院軍事委員会の公聴会で、米国防総省のミサイル防衛局(MDA)が「3つの特殊な」ミサイル迎撃能力を構築しており、その1つは既に韓国に配備されていると証言したのだ。
韓国国内では激しい抗議の声が
エイブラムスは明言しなかったが、これはTHAADを指している可能性が高い。その第1段階は、レーダーと発射台を切り離して運用することのようだ。これは現在、韓国以外の世界6カ所で配備されているTHAADシステムには見られない運用方法だ。
第2段階と第3段階は、最新型の地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)を、THAADのレーダーおよび発射台と統合して、適切な脅威に対して、適切なタイミング、適切なミサイルで対応する能力を確保することだ。
韓国メディアがエイブラムスの議会証言を報じると、韓国国内では激しい抗議の声が上がり、星州郡のTHAAD施設前にはデモ隊が詰め掛けた。だが韓国政府は、この「アップグレード」は従来の施設の不備を補うためであり、中国のICBMを視野に入れたものではないし、その経緯は「中国に十分説明している」と言い張っている。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、THAAD問題について「戦略的曖昧さ」を維持する政策を取ってきたから、これ以上のコメントはなさそうだ。