最新記事

中国

バッハ会長らの日本侮辱発言の裏に習近平との緊密さ

2021年5月26日(水)20時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
訪中して習近平国家主席と会談したIOCのバッハ会長(2019年)

訪中して習近平国家主席と会談したIOCのバッハ会長(2019年) Andy Wong/REUTERS

IOCのバッハ会長が東京五輪断行を無理強いする背景の一つに北京冬季五輪への配慮があるのは明白だが、習近平とバッハ会長との関係の濃さが一連の日本侮辱発言につながっていることを考察する。

IOCバッハ会長とコーツ副会長の日本侮蔑発言に国民の怒り爆発

5月19日、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京五輪と略称)の調整委員会とのリモート会議で、「大会が可能になるのは日本人がユニークな粘り強さと逆境に耐え抜く能力をもっているからだ。その美徳に感謝したい」と精神論をぶちまけた。

そもそもこの発言からして「美徳に感謝」とは言っているものの、反射的に「欲しがりません、勝つまでは」という戦時中に強いられた忍耐力と、「お国のためなら、この命まで捧げる」特攻隊精神を想起させて、なぜ私たち日本人は「コロナ禍でも東京五輪を開催する」という「逆境に耐え抜く能力」を発揮しなければならないのかと、腹立たしい気持ちを惹起された日本国民は少なくないだろう。

これを聞いて「褒められて嬉しい」と思う日本国民はおらず、「バカにするんじゃない」と思うのが、良識ある日本国民のはずだ。

この流れの中で5月22日、バッハは「東京五輪を実現するために、われわれはいくつかの犠牲を払わなければならない」と言ったのだから、「われわれ」は「日本人を指すものではなく、東京五輪関係者すべて」のことだと弁明しても、誰も聞く耳は持たぬ。

日本国民の怒りが爆発したのは至極当然のことだ。

かてて加えて、IOCのコーツ副会長までが「緊急事態宣言が出されている中でも東京五輪は開催する」と断言してしまった。

「緊急事態宣言」はそもそも「不要不急の用は自粛するように」というのが原則だ。

東京五輪は「必要緊急」の用なのかと、日本国民の怒りの炎に油を注いだ。

自粛のために、どれだけ多くの日本国民が苦しんでいるか知れない。自殺者もいれば倒産した会社も数えきれない。入院できずに亡くなった方も毎日のように報告されている。

日本国民の命より東京五輪が大事なのかと、ほとんどの日本国民は思っているだろう。

習近平が東京五輪を支援する理由

習近平国家主席は頻繁にバッハと電話会談し、たとえば5月7日の会談でも、1月25日の会談でも「東京五輪の開催を支援する」と言っているが、これは、東京五輪がコロナのせいで開催されなくなると、人権問題として来年冬の北京冬季五輪にも影響が出てくると考えていることは明らかだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=1─2%下落、FOMCに注目

ワールド

ファタハとハマスが北京で会合、中国が仲介 米は歓迎

ビジネス

アマゾン、第2四半期売上高見通し予想下回る 第1四

ビジネス

スタバ、第2四半期の既存店売上高が予想外に減少 米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 5

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 6

    なぜ女性の「ボディヘア」はいまだタブーなのか?...…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 10

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中