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習近平さえいなくなれば中国共産党は良くなるのか?

2021年5月17日(月)14時20分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

国民党も中国人。

毛沢東は自分が天下を取るためならと、自国の民の命を日本側に売ることによって、国共内戦を中共側に有利に持って行ったのである。

これが中国共産党の神髄だ。理念だ。

それでも「習近平さえ失脚すれば、中国共産党は良い党になる」と主張できるのだろうか?

蔡霞氏には『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』を勧めたい

蔡霞氏は、習近平の父・習仲勲が、実は鄧小平の陰謀によって失脚した(1962年)という事実を知っているだろうか?

鄧小平には、毛沢東が高く評価していた習仲勲らがいた西北革命根拠地の存在価値を何としても薄めようという狙いがあった。

「革命の聖地」と言われた延安は、習仲勲らが1920年代末から築いてきた西北革命根拠地にあった。毛沢東が長征(1934年~36年)の末にようやく辿り着いたのが西北革命根拠地で、その時には中国全土の革命根拠地は全て蒋介石・国民党軍によって殲滅されていて、もし西北革命根拠地がなかったら、毛沢東の革命は失敗し、新中国は誕生していなかっただろう。

1978年に政治復帰した習仲勲を1990年に再び失脚させたのは、やはり鄧小平だ。

天安門事件後になってもなお、習仲勲が「異なる意見を認める法律を制定すべきだ」と主張したからである。

だから習近平は国家のトップに立つやいなや、毛沢東を礼賛し革命根拠地を重視し、言論弾圧を強化するのである。言論の自由を認めよと主張したが故に、父の習仲勲が再度の失脚を余儀なくされたことを熟知しているからだろう。

中国共産党が統治している限り、誰がトップに立とうと言論弾圧は消えない。父の理念に背いてでも言論弾圧をしていること自体が、それを証明している。

蔡霞氏が中共に見切りをつけたことは心から歓迎する。拍手喝采したい。

しかし温室育ちの彼女には見えていないものが多過ぎるように思われてならない。

蔡霞氏には是非とも拙著『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』を読んで欲しいと願う。その上で再度習近平と中国共産党を分析してほしい。素直で潔癖な人物と見受けられるので、衝撃は大きいだろうが、「客観的事実」を受け入れる度量を持っておられると信じる。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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51-Acj5FPaL.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

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