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習近平さえいなくなれば中国共産党は良くなるのか?

2021年5月17日(月)14時20分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

新中国誕生直後には、解放軍を引きつれた王震が、新疆地区で30万人ほどのウイグル人を手当たり次第に殺戮した。「銃弾」により女子供も含めて虐殺している。彼は鄧小平の下で、国務院副総理にまでなっているではないか。

毛沢東が建国後も、どれだけ多くの無辜の民を死に追いやったか、知らないはずはないだろう。

三反五反運動、反右派闘争、大躍進時の大飢饉、文化大革命など全てを含めれば、7000万人ほどは殺しているというのが通念ではないのか?

銃弾を使った殺戮だけが虐殺ではない。

中央党校では、このようなことを教えないのかと、逆にあまりの「党賛美の純粋培養」の中で党員幹部を育てていることに驚きを禁じ得ない。

胡錦涛はチベット鎮圧が鄧小平に評価されトップに立った

蔡霞氏は「胡錦涛時代は民主を求めて、非常に良かった」という趣旨のことを言っている。

しかし、そもそも胡錦涛はチベット自治区の書記として、1989年3月のチベット動乱に対して戒厳令を布告したことで有名で、戒厳令は中国建国来初めてのことだ。

その2ヵ月前の1月、ラサにおいて抗議運動に加わった僧侶に公開死刑を行っており、直後にパンチェン・ラマ10世が急死したことに関しても胡錦涛が関係しているとチベット人(チベット自治区のチベット族の人たち)は信じている。

同年6月に天安門事件が勃発した際も、鄧小平の武力弾圧を真っ先に支持したのが胡錦涛だ。異論を押さえつけるためには武力弾圧を断行することを胡錦涛は支持しているのである。だからこそ鄧小平に認められて、江沢民の次に国家指導者になるよう指名された。

胡錦涛が国家のトップに立つことができたのは、自由を叫ぶ民衆を武力で鎮圧するために建国後初めて発布した戒厳令があったからであり、天安門事件で武力弾圧をした鄧小平を真っ先に支持したからであることを蔡霞氏は知らないわけではあるまい。それとも、それさえ、中央党校では教えない(知らされてない)のだろうか?

私はむしろ、そのことに驚きを禁じ得ないのである。

完璧に美化され、フィルターにかかった「美しい党史」のみを中央党校で教えてきたのだとすれば、そのこと自体が「罪悪」だ。

蔡霞氏の祖父は「日本軍と共謀する役目を負った藩漢年」の部下

蔡霞氏の母方の祖父は、潘漢年の地下交通員を務めていた。

藩漢年は拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』で詳述したように、毛沢東の命令を受けてスパイとして上海にある日本外務省所轄の岩井公館の岩井英一に接触し、日本軍に国民党の軍事情報を売った人物である。毛沢東は張学良に西安事変(1936年12月)を起こさせて中共側に寝返らせ、国民党の蒋介石に「第二次国共合作」を誓わせた。これにより中共軍側は国民党軍側の軍事情報を共有することができるようになり、その軍事情報を日本側に高値で売って、日本軍が国民党軍を打倒しやすいように持って行った。

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