ホテルで24時間監視、食事はカップ麺の「おもてなし」 欧州選手団がマジギレの東京五輪プレ大会
しかしこの報道をめぐり、ある選手は「不愉快」という反応を示した。「日本側の徹底した感染防止措置のおかげで、私たちはコロナ禍以前と同じように練習ができると考えた。選手が密に並んでいたと批判されるのは心外です」
あるチームスタッフからもらった写真には、記者らが間を空けることなく取材にいそしむ様子が映っていた。おそらくメディアは「密」が生じた状況について、直接、選手に質問していないのだろう。「選手らのことを批判する前に、日本の記者の皆さんが密を是正すべきではないでしょうか」。このスタッフは皮肉まじりに指摘していた。
運営側のレベルが未熟としか言いようがない
今回紹介した大会の状況について、2012年のロンドン五輪の際、「市民に公開されたプレ大会は全部行った」という60代女性に意見を求めてみた。
「プレ大会は本来、本大会と気候が同条件の1年前に行われるものですが、コロナの影響でそれは無理だった」と同情を寄せるものの、「すべての条件を本番とより近い形に高めて実施されるべき。会場が整備されている前提で、選手たちが本番に向けた微調整を行う機会だと思います。でも、主催者が飲食物で選手の足を引っ張るなんて、運営側のレベルが未熟としか言いようがないですね」と批判。
そしてこうも付け加えた。「もう開幕まで2カ月ほどしかないのに、食事の手配もきちんとできない人たちがどうやって本番をやるのでしょうか」
幸いにも大会に関係した438人のうち、コロナの陽性者は水際対策で見つかった1人でとどまり、表向きには成功裏に終了した。しかし、選手対応の最前線は多くの課題を残す結果となっている。
「きっと中止だろう」という"やってもムダ"という意識が、開催準備を進めるスタッフの心にブレーキをかけているように見えた今回の飛び込みW杯。五輪開幕まであと2カ月余り、選手らが安心できる形にこぎつけるにはかなりの追い込みが必要そうだが、果たしてどう決着を見るのだろうか。
さかい もとみ(さかい・もとみ)
ジャーナリスト
1965年名古屋生まれ。日大国際関係学部卒。香港で15年余り暮らしたのち、2008年8月からロンドン在住、日本人の妻と2人暮らし。在英ジャーナリストとして、日本国内の媒体向けに記事を執筆。旅行業にも従事し、英国訪問の日本人らのアテンド役も担う。■Facebook ■Twitter