共和党「最後の良心」リズ・チェイニー、トランプ批判で追放の危機
Everything Liz Cheney Has Said About Donald Trump
チェイニーの非は、昨年の大統領選に勝ったのはトランプではないと言明し、議事堂襲撃事件でトランプを非難したこと(写真は2017年) Mark Makela-REUTERS
<トランプに対するまっとうな批判を、共和党は今も受け入れられない。それほどトランプ頼りの党だ>
ディック・チェイニー元米副大統領の長女で、現在は下院議員のリズ・チェイニーが、所属する共和党内から非難を浴びている。昨年の大統領選をめぐってドナルド・トランプ前大統領が根拠のない不正疑惑を言い立てたことや、1月6日の米連邦議会襲撃事件でトランプが果たした役割について、批判的な発言をしたせいだ。
きっかけは3日、トランプがメディア向けの声明で、20年の大統領選は将来、「大きな嘘」として知られるようになるだろうと述べたのにチェイニーが噛みついたことだ。
チェイニーはツイッターで「20年大統領選は盗まれていない。そんなことを主張する人は、法による統治に背を向け、われわれの民主制度を害し、『大きな嘘』を広めていることになる」と述べた。
また同じ3日、チェイニーは保守系シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所がジョージア州で開いたイベントでトランプを名指しで批判した。
「嘘の土台には党や保守主義運動の再建はできない。選挙は盗まれたという考えを信奉するわけにはいかない」とチェイニーは述べた。
「(そうした考えは)わが国の民主主義の血流にとって毒となる。郊外の有権者を取り戻し、20年の選挙でわれわれに票を投じてくれたすべての人を引き留めるには、アイデアと政策を使うべきだ。個人崇拝のカルトになるわけにはいかない」
院内総務からは「戦力外通告」
チェイニーはまた、共和党は「1月6日の(米連邦議会襲撃)事件を取り繕ったり、トランプの大きな嘘の定着に手を貸したり」するわけにはいかないと述べた。
だがチェイニーの発言には共和党内から反発の声が多く上がった。下院共和党の序列第3位の座からチェイニーを引き摺り降ろす動きもある。ケビン・マッカーシー共和党下院院内総務は4日、チェイニーが「職務を遂行できるか」疑問視する声が共和党の議員の間で上がっていると述べた。
チェイニーが共和党内からの批判にさらされるのは今年に入って2回目だ。チェイニーはトランプに対する弾劾決議案を支持し、共和党に造反した下院議員10人のうちの1人。2月にはチェイニーの役職を解くべきかをめぐって下院共和党でが行われ、145対61で否決されていた。
チェイニーは弾劾に賛成した理由について、連邦議会襲撃事件を起こした支持者の集団をトランプが呼び集めたのは明らかだからだと説明。「その後の出来事はすべて彼のしわざだ」と述べ、「アメリカ大統領による、大統領職と憲法の(遵守を誓った)宣誓に対するこれほどの裏切り」は前例がないと語った。
チェイニーはトランプの在任中から、外交政策などで政権への批判を繰り返してきた。