最新記事

中国

温家宝の投稿はなぜ消えたのか?

2021年5月5日(水)13時42分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

第四十六条:インターネット、ラジオ、テレビ、新聞雑誌、書籍、講座、論壇(フォーラム)、報告会および座談会などの手段を通して、中央政府の重大な施政方針に関して妄言を吐き(妄信的に議論し=妄議し)、党の集中統一を破壊した者で、その情状が重大である場合は、党から除名する

(四十六条の三には、「党や国家のイメージを毀損し、党や国家の指導者を誹謗中傷したり、党や軍の歴を歪曲した者に対しても、一定期間の保護観察あるいは党から除名する」旨のことが書いてある。)

これは反腐敗運動を断行する際に中共中央で定めたものだが、温家宝自身が2003年12月に強く主張して胡錦涛とともに制定したのだから、これに違反するということは、あってはならないことだろう。

温家宝自身が取り下げたと判断される根拠

そこで、『澳門導報』に連載した追憶記を取り下げたのは温家宝自身だろうということが推測されるのだが、その判断根拠になったプロセスをご説明したい。

第4回目の連載が4月15日に公開されると、4月16日には中国大陸内でいくつかの、あまり大きくないサイトやWeChat(ウィ・チャット)(微信)の個人サイト「温暖世界」などが転載した。しかし4月17日になると、転載を抑える動きが見られ、中には削除されるものが現れた。

これは明らかに中宣部(中共中央宣伝部)が内部で待ったをかけ、論議が生じたものと推測できる。中宣部はすぐさま中共中央紀律検査委員会にお伺いを立てただろうが、この段階になると、必ず温家宝の耳に入る。

なぜなら前国務院総理だ。素早い情報キャッチと報告は、くまなく温家宝の周りにも張り巡らされているからだ。

自分の文章に関して党内で「争議」が生じたことを知った瞬間、温家宝ならすぐさま自分の「過ち」に気づき、「自ら取り下げる」はずだ。

なぜなら、もうかなり昔の話になってしまうが、 温家宝がまだ中共中央書記処の書記をしていたころ(90年代半ば)、私は何度か彼に会っている。中央弁公庁に筑波大学時代の教え子がいた関係からだ。温家宝は素朴で威張らず、誠実な人だった。

私は1941年生まれで、彼は1942年生まれ。

中国建国後の1950年には朝鮮戦争が起きて、私は朝鮮族が多い吉林省朝鮮族自治州の延吉から天津に行き、そこで建国後の息吹を鮮烈な形で経験している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 8
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 9
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 10
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中