ワクチン接種進むアメリカで「変異株の冬」に警戒が高まる
BEWARE A WINTER SURGE
アンケート調査などでは、接種を拒むさまざまな理由が見て取れる。忙しい。危機感がない。ワクチンの安全性に対する懸念がある。医療・公衆衛生当局は信用できない。ワクチンの危険性を大げさに語り、コロナのリスクを過小評価する陰謀論も根強い。
モクダッドらはこうした事情も考慮し、秋までに接種を終えるアメリカ人は2億人から2億2500万人と予測している。
問題は涼しくなってから
この夏に関する限り、集団免疫ができていないことはあまり問題にならない。夏は屋外で過ごす人が増える。そして屋外ではウイルスが風に飛ばされて拡散するため、感染を引き起こしにくいからだ。
問題は気温が下がってからだ。人は閉め切った部屋で過ごす時間が増える。そうした部屋では空気中にウイルスが滞留しやすくなる(たばこの煙が籠もるのと同じだ)。だから感染リスクが高まる。
そうであれば、冬が来るまでにワクチン接種率を今よりも上げておく必要がある。モクダッドに言わせれば、望ましい水準は85%だ。
「あまり理解されていないが、こうしたウイルスの封じ込めに必要な集団免疫の水準は、夏場ならば低くてもいい」とモクダッドは言う。
「しかし冬にはずっと高い水準が求められる。ウイルスがずっと拡散しやすいからだ。これがアメリカを待ち受ける最大の課題だ」
冬になれば、このウイルスへの免疫ができていない反ワクチン派の人たちが大量に、自分で気付かないうちに感染してしまう恐れがある。しかもウイルスの変異株は増える一方だ。1億人以上のアメリカ人がワクチン接種で獲得した防御機構を擦り抜ける新種の変異株も登場してくるだろう。
それに、多くの国ではワクチン接種が始まったばかり。ウイルスは今後も突然変異を繰り返し、生存能力の高い変異株が生き残っていく。その脅威はまだまだ続く。
※後編に続く:ワクチンvs変異株、パンデミックが想定以上に長引く可能性
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