最新記事

中国

米中「悪魔の契約」──ウイグル人権問題

2021年4月30日(金)18時39分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
東トルキスタンを象徴する旗

東トルキスタンを象徴する旗 Sefa kart-iStock.

中国が堂々とウイグル人弾圧を強化できたのは、2002年にアメリカが中国にイラク制裁を認めさせる代わりに、ウイグル人を弾圧するための東トルキスタン・イスラム組織の存在をアメリカに認めさせるという契約を交わしたからだ。

「9・11事件」で接近した米中

2001年9月11日にニューヨークで同時多発テロ事件(9・11事件)が発生すると、紆余曲折を経ながらアメリカはテロ事件の首謀組織であるアルカイダとイラク政府がつながっているとみなすようになった。アメリカのブッシュ大統領は2002年初頭の一般教書演説で「イラク、イラン、北朝鮮」を「悪の枢軸国」と定義して「大量破壊兵器を保有するテロ支援国家」であると非難している。

特にイラクに関しては早期攻撃を求める開戦支持派の声が大きくなり、ブッシュ大統領はイラク戦争開戦への準備を始めた。

中国との関連のみに目を移せば、当時の国家主席(&中共中央総書記&中央軍事員会主席)だった江沢民は、中国国内におけるさまざまな抗議活動を抑え込む目的からも、「9・11事件」に同情を示し、「反テロ」姿勢を明確にした。

2001年10月19日(「9・11事件」の翌月)、江沢民は上海で開催されたASEAN首脳会談においてブッシュと会談し、二人は「反テロ」などに関して「建設的な協力関係の発展」を約束した

ブッシュはこの会談で、概ね以下のように述べている。

──私はずっと江沢民主席と会えるのを楽しみにしていました。アメリカは中国との関係を非常に重視しています。中国は偉大な国家です。中国はアメリカの敵ではなく、アメリカの友人だと位置づけています。私は中国がWTOに加盟することを強烈に支持してきました。私は中国が「9・11事件」に対して迅速に反応し、鮮明にアメリカの「反テロ」を支持して下さったことと、中国が「反テロ」においてアメリカと協力すると表明してくれたことに心から感謝しています。

アメリカがイラク戦争を起こすために中国と交わした交換条件

これを皮切りに、米中両国は妖しいまでに接近し始める。

先ず2002年2月21日、ブッシュは北京を訪問し、人民大会堂で江沢民と会談した

江沢民はブッシュに熱烈な歓迎を表し「4ヵ月前に会ったばっかりですが、あれからの4ヵ月間、米中は各方面において、実に目覚ましい友好的な関係と発展を遂げてきた」と述べた。

それに対してブッシュは心からの謝意を表するとした上で、「中国人民が9・11事件後、アメリカ国民に慰問の意を表し、反テロ闘争を支持してくれていることに、もう一度感謝の意を表したい」と返した。両者は「米中両国が中長期的に反テロ交流と協力機構を充実させていくこと」に合意した。

何よりも注目したいのは2002年8月26日に、当時のアーミテージ国務副長官が訪中し中国と交換条件を約束したことだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中