イスラエル政治が大混乱...その陰で「争点ですらなくなった」パレスチナ問題
The Real Losers of Israel’s Election
2020年には、ネタニヤフ政権が西岸の一部併合について発言しだした。ただ、8月に一連の「アブラハム合意」の第1号となるアラブ首長国連邦(UAE)との国交正常化が実現すると、入植地併合の主張はトーンダウンした。イスラエルはその後、バーレーン、スーダン、モロッコとも国交を正常化している。
だが、アブラハム合意は、それまでのアラブ諸国のコンセンサス、すなわち「イスラエルがパレスチナ占領に終止符を打ち、パレスチナ国家樹立を認めない限り、国交正常化には応じない」という姿勢が揺らいでいることを露呈することになった。明らかな方向転換となったのだ。
アラブ勢の足並みの乱れは、今回のイスラエル総選挙でも垣間見られた。アラブリスト連合をはじめとするアラブ系政党は、イスラエルの市民権を持つアラブ系住民の教育や医療といった福祉増進と平等の実現を訴えていて、パレスチナ問題にはほとんど関心を示していない。
アラブリスト連合を率いるマンソール・アッバス自身は、2国家共存案の支持を表明してきたが、もはやパレスチナ国家樹立が非現実的な夢であることは、暗黙の了解となりつつある。「イスラエルのアラブ系住民は、基本的に2国家共存案を諦めている」とカプランは指摘する。
そんななか、イスラエルはヨルダン川西岸で分離壁建設を進めている。国際法では違法行為だが、アラブ諸国の足並みが乱れている今、諸外国もこの問題に首を突っ込むことに消極的になりつつある。
ネタニヤフは4月5日、自らの汚職疑惑裁判に出廷。リクードを最多議席に導いても、その政治的求心力は着々と低下していることを印象付けた。
結局のところ、今回の選挙はパレスチナ国家支持派と反対派の戦いでも、左派と右派の戦いでもなく、ネタニヤフ支持派と批判派の戦いだったのだ。その構図はしばらく変わりそうにない。
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