イスラエル政治が大混乱...その陰で「争点ですらなくなった」パレスチナ問題
The Real Losers of Israel’s Election
熱烈な支持者もいるネタニヤフだが批判派も多い(3月24日) RONEN ZVULUNーREUTERS
<連立政権協議が難航して再選挙もささやかれる一方でパレスチナ問題は争点にさえならなくなった>
イスラエルでは2年間で4回目となる総選挙が3月23日に実施されたが、政治的な麻痺状態が解消されるのではないかという期待は裏切られた。
現職のベンヤミン・ネタニヤフ首相が率いる右派リクード党は、最多議席を獲得したものの単独過半数には届かなかった。連立政権をめぐる議論が続いているが、見通しは立っていない。
クネセト(議会)の過半数は61議席。現段階でネタニヤフが支持を得ている52議席は右派と極右勢力で、反ネタニヤフ派は45議席前後で推移している。7議席を獲得した中道右派のヤミナや、アラブ系イスラエル人の新党で4議席を獲得したアラブリスト連合などは態度を表明していない。
4月6日にルーベン・リブリン大統領はネタニヤフに組閣を指示したが、一方で、誰が首相候補でも組閣は成功しそうにない、とも語っている。
要するに、今回の選挙に勝者はいない。しかし、敗者が誰なのかは明らかだ。
「今回の選挙で、パレスチナ人はほとんど注目されなかった」と、人権団体ICAHD(パレスチナ人家屋の破壊に反対するイスラエル委員会)に協力している人類学者のジェフリー・カプランは言う。
パレスチナ人の権利や、ヨルダン川西岸地区の占領とガザ地区の封鎖について、「左派はもちろん、アラブ系の政党も選挙活動では取り上げなかった。占領とパレスチナ人と平和の問題全体が軽んじられている。パレスチナ人はイスラエル国内でも国際的にも、政治の地図から消された」。
西岸地区とガザ地区に暮らす約500万人のパレスチナ人はイスラエル国民ではないため、今回の選挙で投票権はなかった。しかし、イスラエル国民の選択は、パレスチナ人社会に大きな影響を与える。彼らの生活は、イスラエルの国としての行動に多くの形で支配されるのだ。