世界の経済政策リーダーに女性続々 コロナ禍克服へ新風
米国のバイデン新政権では多くの女性が経済関連の閣僚や要職に就き、米経済の回復に取り組んでいる。写真は欧州中央銀行(ECB)総裁のクリスティーヌ・ラガルド氏。2020年2月、仏ストラスブールで撮影(2021年 ロイター/Vincent Kessler)
米国のバイデン新政権では多くの女性が経済関連の閣僚や要職に就き、米経済の回復に取り組んでいる。
バイデン政権は財務長官にジャネット・イエレン氏、商務長官にジーナ・レモンド氏、通商代表部(USTR)代表にキャサリン・タイ氏が就任したほか、経済顧問の多くで女性を起用。承認を受けた閣僚級ポストで女性の占める比率が48%近くに達した。
こうした「潮目の変化」は、すでに経済政策に影響しているかもしれない。バイデン政権が先に発表した総額2兆3000億ドル(約252兆4400億円)の「米雇用計画」では、自宅やコミュニティーで子供や高齢者を世話する職を支援するために4000億ドルが充てられた。こうした職種は通常、女性が担う仕事とされ、そのほとんどはこれまで正当に評価されてこなかった。
米雇用計画は過去の経済、通商、労働政策によって作られた人種的、地域的な不平等の是正にも数千億ドル余りの資金を割り当てている。
「経済の構造問題の是正が始まる」
イエレン氏は、「人的なインフラ」に焦点を当てる政策と先の1兆9000億ドル規模の追加経済対策が、女性と、そしてすべての人々に大きな改善をもたらすことは間違いないと言う。女性が全労働力に占める比率はコロナ危機前でさえ過去40年の最低水準に落ち込んでいた。
イエレン氏はツイッターに「最終的にこの法案は80年の歴史を作ることになるかもしれない。過去40年間でわれわれの経済に広がった構造的問題の是正が始まる。これはわれわれにとってスタートに過ぎない」と投稿した。
専門家によると、女性指導者は経済政策に新しい視点を持ち込むことができる。
ハーバード・ビジネス・スクールのレベッカ・ヘンダーソン教授によると、「グループの他のメンバーとは違う人物は、物事を異なる方向から見ることがたびたびある」。そうした人物は「異なる解決策に前向きな傾向を持つ」と同教授は指摘、それこそが今求められていることだという。教授は「われわれは重大な危機に直面している。新しい考え方が必要だ」と話した。
共感と安定性
過去半世紀で大統領か首相に就いた女性は57人だが、経済政策を決める組織は最近までほとんど男性が支配してきた。米国以外では、欧州中央銀行(ECB)総裁にクリスティーヌ・ラガルド氏、国際通貨基金(IMF)専務理事にクリスタリナ・ゲオルギエワ氏、世界貿易機関(WTO)事務局長にヌゴジ・オコンジョイウェアラ氏が就いているが、これらのポストは10年前にはいずれも男性が占めていた。
シンクタンクのOMFIFの年次報告によると、女性が財務相に就いているのは16カ国、女性の中央銀行総裁は14人だ。
入手可能な限られたデータによると、女性の方が危機の際に複雑な組織を運営する上で優れた実績を残している。
ゲオルギエワ氏は1月、IMFなどによる調査結果を引き合いに、「女性が関与している際のエビデンスは非常に明確だ。コミュニティーが改善し、経済は上向き、世界が良くなる」と述べた。
その上で「女性は優れた指導者になる。最も弱い立場にある人々に共感を示し、そうした人々のために物申すからだ。女性は決断力がある。女性は妥協を見いだすことにも、より前向きになることができる」と語った。