洪水でクモ大量出現、世界で最も危険な殺人グモも:シドニー
「本当に心底ぞっとさせられた...... 」 Inside Edition-iStock
<洪水に見舞われたシドニー近郊で、数千匹のクモが住宅に押し寄せた。致死性の毒を持つ「殺人グモ」の出現も相次ぐ>
オーストラリア南東部のニューサウスウェールズ州で3月下旬、数十年に一度レベルの大規模な洪水が発生した。約1万8000人の住民が避難を余儀なくされた大災害は、浸水地域の広がりと共に、住民たちをさらに戸惑わせる異常事態を招く。通常は地面付近で活動しているクモが水に溺れまいとし、民家など高い場所を求めていっせいに這い上り始めたのだ。
豪ABCは民家の壁を覆うようにびっしりと発生した無数のクモの動画を掲載し、「まるで悪夢のようだ」と報じている。外壁にうごめく大小のクモは、この1棟の周囲だけでも数百匹ないしは一千匹を超えようかという密度だ。
住人の女性は発見当時を振り返り、「あんなものは今までに見たことがなく、本当に心底ぞっとさせられた」「辺りでクモを見かけることはたまにあったが、あれほどのことはなく、まさしく常軌を逸している」と語った。
女性が住む一帯は床下浸水に見舞われたが、幸いにも水位は床上に至らず、深夜1時を回ったころには水が引き始めたという。ほっとしたのも束の間、戸外の郵便受けを見ると小さな黒い集団がびっしりと覆い尽くしており、目を凝らすとそれらはすべてクモであることが判った。隣家のフェンスにも所狭しと大群がよじ登っており、「明らかに数千匹はいた」と女性は証言している。
オーストラリア爬虫類パークのティム・フォークナー園長は英インディペンデント紙に対し、クモたちは洪水で住処を追われ、乾いた土地を求めて大移動したのだろうと解説している。
通常は落ち葉の下や岩場、そして灌木の茂みなどを好むため、人目に触れる機会は比較的少ない。しかし、地面が水没したことにより、民家の床上など浸水していない場所によじ登るようになり、人々の生活に近いところに異常な数が密集する事態となった。
こうした身の毛のよだつ光景に留まらず、さらに危険な出来事が洪水の被災地を襲う。
殺人グモが活発に
洪水とクモ大量出現の組み合わせに住民たちは背筋を凍らせたが、これとは別に、専門家たちの間にも静かな危機感が広がっていた。ただのクモならさほど気にする必要はないが、シドニー近郊には「殺人グモ」とも呼ばれるシドニージョウゴグモが生息する。天気予報は気温の上昇を告げており、シドニージョウゴグモは高温と多湿の組み合わせを好むことから、行動の活発化は必至だ。
オーストラリア爬虫類パークで爬虫類およびクモ部門を統括するダン・ラムジー氏は、ニュース専門局の豪スカイニュースに出演し、危険性を警告している。氏はシドニージョウゴグモについて「ここオーストラリアに限らず、世界中でも最も危険なクモのひとつである可能性がある」と述べ、毒グモのなかでも屈指の毒性だと訴えた。