最新記事

台湾海峡

台湾は火薬庫、第一次大戦前のバルカン半島のようだ──台湾から見た中台関係

Taiwan Strait a 'Powder Keg' That Could Set Off World War, Military Expert Warns

2021年4月7日(水)19時33分
ジョン・フェン
烈嶼鄉から中国の厦門を臨む台湾兵の像

反共の砦、烈嶼鄉から中国の厦門を臨む台湾兵の像  Tyrone Siu-REUTERS

<日米にとっての台湾の戦略的重要性が増したのは成果だが、同時に台湾は米中の争いに巻き込まれてもいる>

台湾海峡はいわば「火薬庫」で、世界戦争を引き起こしかねない危うさを秘めている、とある軍事専門家が警告した。発言が行われたのは、4月6日に開催されたパネルディスカッションでのこと。台湾側の視点から、アメリカの外交政策を議論する催しだった。

中国海軍の空母「遼寧」が率いるタスクグループ(任務群)が現在、台湾の東側にあたる海域で戦闘演習を実施している。中国側はこれを「通常の」演習だとしているが、米軍は太平洋で実施されているこの演習を注視しており、米海軍の「セオドア・ルーズベルト」空母打撃軍が南シナ海入りしている。

緊張感が高まり続ける中、アメリカと中国、台湾の3者がいずれも後に退けない「悪循環」に入り込んだことを示す複数の兆候がある。こう指摘するのは、台湾北部の桃園市にある国防大学の教授で、中共軍事事務研究所の所長を務める馬振坤だ。

台湾の国営通信社である中央通訊社によると、馬が上記の発言をしたのは、台北市に本拠を置くシンクタンク「プロスペクト・ファウンデーション(遠景基金会)」主催による、4人の専門家によるパネルディスカッションの席上だった。同シンクタンクは中台関係の研究が専門で、台湾政府にも助言を行う立場にある。

狭まる平和的解決の道

馬は、台湾海峡の現状は第1次大戦前のバルカン半島に近く、「平和のための窓」、つまり武力行使によらない中台問題の解決可能性はかなり狭まっていると指摘した。

「どの国も自ら戦争を引き起こそうという意図はないのだが、台湾海峡と周辺地域には戦争を引き起こす『火薬樽』がばらまかれている」というのだ。

馬がこの発言をした日には、中国人民解放軍の軍用機4機が台湾の防空識別圏(ADIZ、各国が国際法の定めによらず、防空目的で自主的に設定する空域)に侵入した。前日の5日には、空母遼寧と5隻の戦艦からなる部隊が西太平洋入りする一方で、中国人民解放軍の戦闘機と哨戒機、計10機が台湾のADIZに入ったと台湾国防部が発表した。

中国軍の戦闘機は3月、合計18日間にわたって台湾の防空レーダーの監視圏内に入り、4月に入ってからも4日連続で侵入していると、台湾国防部のウェブサイトは伝えている。

6日のパネルディスカッションは、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官によるアジアおよびヨーロッパ歴訪をテーマにしたもので、台北市にある国立政治大学(NCCU)の李世暉教授も参加した。

ブリンケンによる東京とソウル、そして欧州連合(EU)本部のあるブリュッセル歴訪は、アメリカの政権交代後初となる外交トップの訪問であり、アメリカと同盟国の互恵関係を再び確立するというジョー・バイデン大統領の外交戦略を示すものだと李は指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中