【コロナルポ】若者が感染を広げているのか? 夜の街叩きに火を着けた専門家の「反省」
ARE THEY TO BLAME?
一ノ瀬は感染症専門医のアドバイスも受けている。緊急事態宣言中は営業を自粛した。その間の売り上げは当然ながら、ない。2丁目では、名の知れた店舗を閉じるという選択をする店も少しずつ出てきた。それでも続ける理由はどこにあるのか。一ノ瀬ははっきりとした口調で、自分に言い聞かせるように言った。「ふらっと1人で入れる店は、私にとっては居場所です。2丁目にお店があるから、私は1人だけど、1人じゃないって思える」
押谷もまた飲食業界の関係者と共に、ガイドライン策定に関わっている。だが、ガイドラインはあくまでガイドラインであって、それを守ることだけが目的でなく、最終目標はリスクの低減にあるという。
リスクを語るとき、そこに絶対的な「安全」は存在しない。感染症対策を徹底したいのならば、全員が外に出ることなく人との交流や諸外国との行き来を全て制限することが望ましい。だが、それは経済・社会的な「死」と同義だ。絶対の安全がないなかで、私たちは新型コロナウイルスという厄介な存在としばらくの間、向き合っていく。
かつて取材で知り合ったライブハウス関係者に連絡を取ったとき、こんなことを言われた。
「あぁ僕はキャバクラもホストクラブも行かないので、そこで感染が広がっていると言われたら、給付金も与えずに閉めろって言いたくなりますよ。そこで思うわけです。社会にとって、ライブハウスってそういう存在だよな。人って自分にとってなくてもいいものに対して厳しいことが言えますもんね。誰かが必要としているのに」
敵を見つけ、名指しし、排除も差別も肯定する社会を目指すのか。専門知と現場で積み上がった知を組み合わせて、共通の目標としてリスクの低減に向けて動きだすのか。前者は、多くの人々の「けしからん」という感情を満たすかもしれない。だが、それだけだ。少なくとも、ここに登場した新型コロナウイルス対策に邁進した専門家、名指しされながらも日々経営を続ける人々は、後者を選び、歩きだしている。
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