バイデン政権も「中国への強硬姿勢は正しい」と、脱中国に挑む
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新大統領も頭が痛い。新型コロナ対策で巨額の支出を迫られるなか、アメリカの財政赤字が空前のレベルに達するのは必至だ。事情通の関係者によると、国防当局が恐れているのは、今後2、3年にわたって予算削減の圧力がかかる事態だ。この関係者は冗談めかして、バイデンによる「アジアへの旋回(ピボット)」も(オバマ時代と同様)掛け声倒れに終わるのではないかと心配していると語った。オバマの「ピボット」は大々的に宣伝されたが、結局アジアに再配置された部隊はほんの一握りだった(しかもその大部分はオーストラリアに派遣された)。
どうやら、トランプ政権の中国に対する厳しい姿勢は正しかったというブリンケンの発言は本気だったらしい。貿易面でも軍事面でも、バイデンのアプローチは今のところ前政権と変わりない。
中国政策を見定めるシグナル
テクニカルな問題を別にすれば、新政権がトランプ政権と異なる点は2つ。まずは中国と貿易面で対峙する上でも軍事面で有効な抑止力を維持する上でも、同盟諸国との協力を重視すること。もう1つは、他のあらゆる分野で関係が緊張していても、気候変動に関しては中国との協力を進めるという点だ。
世界で最も多くの二酸化炭素を排出している中国を口説き落とすという目標は悪くない。しかし、中国が説得に応じると信ずる根拠は何もない。気候変動問題担当大統領特使のジョン・ケリーは、世界はこの問題でアメリカがリーダーシップを発揮することを渇望していると述べた。しかし実際のところ、中国は気候変動に関するアメリカの「リーダーシップ」など少しも期待していない。
だが民主党内では、この問題が非常に重要な意味を持っている。バイデンは支持者を満足させるために、カナダの油田と米メキシコ湾岸の製油所を結ぶキーストーンXLパイプラインの建設認可を取り消し、労働組合員の怒りを買うこともいとわなかった。それを考えると、中国はこの問題を利用して欲しいものを手に入れようとするかもしれない。あちこちで排出量の削減を約束したり、「グリーン」エネルギーの研究プロジェクトに加わる代わりに、関税の撤廃や経済戦争の段階的緩和を求めてくる可能性も否定できない。
では、バイデンの中国政策を見定める重要なシグナルは何か? まずは、中国がアメリカ製品やサービスの輸入を増やさなかった場合に、トランプ時代の高関税を無期限に維持するかどうか。また現在進行中の国防計画見直しによってアメリカの東アジアにおける兵力の配置等がどのように変化するか。脱退したTPP(環太平洋経済連携協定)への復帰を試みるかどうかも焦点となる。
こと中国に関する限り、バイデンは夢を追うよりも現実を直視する覚悟だ。たとえ、その現実がトランプ色に染まっているとしても。