最新記事

ミャンマー

ミャンマーで中国資本の工場に放火、クーデターや弾圧を非難しない中国に反発も

China Demands Myanmar Protect Its Citizens As Chinese Factories Torched

2021年3月16日(火)16時55分
デービッド・ブレナン
ミャンマー クーデター 放火された中国資本工場

South China Morning Post/YOUTUBE

<軍事クーデターに反対する人々に対する激しい弾圧が続くミャンマーで、国軍を支持していると疑われる中国に対する怒りも燃えている>

ミャンマーにある中国資本の工場が複数放火された事件が3月14日に起きたのを受け、中国外務省は翌15日にミャンマーの軍事政権に対し、同国に住む中国人たちの安全を確保するよう要求した。ミャンマーでは、民主化と反クーデターを訴える抗議デモに対する弾圧が強まっている。

3月14日には、デモ隊や警官など少なくとも38人が死亡した。国民によって選出された民主政権を退陣させるためのクーデターを国軍が2月1日に起こして以降で1日の犠牲者は最多となった。暫定軍事政権は現在、ヤンゴンの6地区に戒厳令を発令し、反クーデターを訴える大規模な抗議活動を鎮圧しようと躍起になっている。多数の逮捕者や行方不明者が出ているほか、軍が非武装のデモ隊に向かって発砲している。

ミャンマーの人権団体「政治犯支援協会」(AAPP)によると、クーデターが発生して以来、治安部隊によって殺害された人は126人を超えたとされている。

在ミャンマー中国大使館によると、3月14日に抗議活動が行われた際、中国資本の工場が数カ所、襲撃と放火を受け、複数の中国人が負傷した。中国は、ミャンマーと国軍にとって重要な同盟国だ。中国政府はクーデターの非難を避けているが、3月15日の外務省会見では、ミャンマーの治安部隊は中国関係者の安全を確保すべきだと述べた。

また、中国国営の中国国際テレビ(CGTN)によれば、中国大使館は3月14日に発表した声明で次のように述べている。「中国はミャンマーに対し、有効な手段をさらに講じて、すべての暴力行為を止めさせ、法律に従って犯罪者を罰するよう強く求める。ミャンマーで操業している中国の工場の財産と、従業員の生命の安全を確保するよう要求する」

中国資本の工場を誰が襲撃したのかはわかっておらず、犯行を認めた組織もない。中国の政府系英字紙「環球時報」は、中国資本の32工場が「激しい襲撃を受けて破壊された」と伝えており、被害総額は約3700万ドル、中国人の従業員2名が負傷したと報じた。

環球時報は社説でも、犯罪者を「厳罰に処すべき」だと主張し、襲撃は「明らかに綿密な計画に沿って行われた」ことをほのめかしている。

『デモ隊への非難は筋違い』

中国は暫定軍事政権と緊密な関係にあり、クーデターを非難していないため、民主政権を支持するデモ隊の多くは中国に疑念を抱いている。ミャンマー最大の都市ヤンゴンにある中国大使館の周辺では、国軍が政権を握ったことに対する抗議活動が続いている。

国連安全保障理事会は10日、「平和的なデモ参加者に対する暴力を強く非難」し、軍に「最大限の自制」を求めるという内容の声明を出しており、中国政府はその内容を支持している(ただし原案にあったクーデターに対する非難や追加対応の示唆は、中国やロシアなどの反対で削除された)。しかし、国軍に反対する勢力は、中国にはもっとできることがあると訴えている。

中国大使館は3月14日に出した声明で、デモ隊に対し、自分たちの要求は法に従って表明し、中国とミャンマーの関係を損なわないよう求めた。中国は香港と合わせると、2019年から2020年度における最大の対ミャンマー投資国となっている。

反クーデターのデモ隊を率いる若手活動家のティンザー・シュンレイ・イーは3月15日付けのツイッターで、中国政府がビジネスの権益を守りたいなら、クーデターを非難することがいちばんの方策だと述べた。「中国政府がミャンマーとの関係を大切にし、ミャンマーで操業する中国企業を守りたいのなら、クーデター政権を支持するのを止めなるべきだ」

イーはさらにこう述べた。「(デモ隊は)中国人に反感を抱いているわけではない。私たちは、隣国同士として良い関係を保ってきた。しかし、このたびの声明でミャンマー人が激しい怒りを覚えたことを、中国共産党は理解しなくてはならない」

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アップル、見通しさえず株下落 第4四半期は予想上回

ワールド

米裁判所、マスク氏訴訟の手続き保留を決定 大統領選

ワールド

北朝鮮、31日発射は最新ICBM「火星19」 最終

ワールド

原油先物、引け後2ドル超上昇 イランがイスラエル攻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選と日本経済
特集:米大統領選と日本経済
2024年11月 5日/2024年11月12日号(10/29発売)

トランプ vs ハリスの結果次第で日本の金利・為替・景気はここまで変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後はさらなる「倒産増加」が予想される
  • 2
    「まるで睾丸」ケイト・ベッキンセールのコルセットドレスにネット震撼...「破裂しそう」と話題に
  • 3
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符を打つ「本当の色」とは
  • 4
    脱北者約200人がウクライナ義勇軍に参加を希望 全員…
  • 5
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 6
    北朝鮮軍とロシア軍「悪夢のコラボ」の本当の目的は…
  • 7
    天文学者が肉眼で見たオーロラは失望の連続、カメラ…
  • 8
    中国が仕掛ける「沖縄と台湾をめぐる認知戦」流布さ…
  • 9
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 10
    自爆型ドローン「スイッチブレード」がロシアの防空…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 3
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」全長10メートルの生活の魅力を語る
  • 4
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符…
  • 5
    2027年で製造「禁止」に...蛍光灯がなくなったら一体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語ではないものはどれ?…
  • 7
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 8
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後…
  • 9
    「決して真似しないで」...マッターホルン山頂「細す…
  • 10
    【衝撃映像】イスラエル軍のミサイルが着弾する瞬間…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 8
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 9
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 10
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中