最新記事

外相会談

初の米中直接対話に「雪解け」を期待する中国

China Wants U.S. Ties 'Back to Right Track' in First Meeting Under Biden

2021年3月15日(月)17時47分
トム・オコナー
ブリンケン米国務長官

ブリンケン米国務長官はトランプ前政権の強硬な対中スタンスを支持する姿勢を見せている Manuel Balce Ceneta/Pool -REUTERS

<トランプ前政権下で冷えきった関係を「正しい軌道」に戻したい意向だが、香港や新疆の問題では譲歩する様子は見えず>

バイデン米政権発足後初となるアメリカと中国の外交責任者による直接会談を前に、中国政府は対米関係に前向きなトーンを取り戻そうとしている。

中国の外交トップである楊潔篪(ヤン・チエチー)共産党政治局員とアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官の会談は3月18日、アラスカで行われる。これはバイデン政権と中国政府が初めて直接対面して行う会談であるとともに、2月に行われた習近平とバイデンの電話会談以降、両政権の初の接触となる。

アメリカのトランプ前政権とは激しい言葉の応酬を繰り返した中国だが、この会談にそうした緊張を和らげるチャンスを見いだそうとしている。

「対話を通して双方が、両国首脳による電話会談の精神に立脚し、協力に意識を集中し、相違に対処し、健全で着実な中米関係を促進できることを期待する」と、中国外務省の趙立堅(チャオ・リーチエン)副報道局長は12日、記者会見で述べた。

趙は具体的な会談のテーマはまだ決まっていないとしながら、「共通の関心事について双方が率直な対話ができること」への期待を語った。

「中国は自らの立場を明確にするだろう」と趙は述べた。「双方は互いの政策意図を正確に把握し、相互理解を深め、意見の違いをコントロールし、中米関係を正しい軌道に戻すべきだ」

「協力できる分野もある」と米政府

バイデン政権はドナルド・トランプ前大統領が推し進めた政策にはおしなべて批判的だ。ただし中国に対し強硬なスタンスを取るという決断については話が別で、ブリンケンは支持する姿勢を示している。またブリンケンは、中国の貿易慣行や人権侵害、地政学的に侵略的な行動を非難してきた。

ブリンケンは10日、会談では「互いの間に深い意見の違いがあるものを含めたさまざまな問題」を取り上げるだろうと述べた。

その翌日、米国務省のネッド・プライス報道官はさらに踏み込んで、中国政府が「両国関係のトーンを変えたいというこれまで何度も表明してきた願望に関し、本気度を示す」ことへの期待を示した。

「難しい対話になるだろう」とプライスは述べた。「中国政府の行動や振る舞いが、いかにアメリカのみならずアメリカのパートナーや同盟国の安全保障や繁栄、価値観を脅かしているかについて率直に説明するつもりだ」

バイデン政権の高官らは、中国と協力できる分野もあれば対立する分野もあるとの見方を語る。協力できる分野には、気候変動やグローバルな医療問題、軍縮や核拡散防止といったテーマが含まれるかも知れない。一方で香港やチベット、新疆ウイグル自治区など、中国が「国内問題」と考えている問題については対立も起こりうる。

中でも最もやっかいなのが台湾の地位を巡る問題だろう。米中の対話における非常に大きな障害になりうる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米副大統領、グリーンランド訪問 「デンマークの保護

ビジネス

米ミシガン大消費者調査、5年先インフレ予想4.1%

ワールド

米関税に「断固たる対抗措置」、中国国営TVが短文サ

ビジネス

米2月PCE価格+2.5%、予想と一致 スタグフレ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 8
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 9
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中