最新記事

地球

「地球の内核に新たな層が存在する」との研究結果

2021年3月10日(水)18時30分
松岡由希子

「教科書を書き換える必要があるかもしれない」...... Rost-9D-iStock

<オーストラリア国立大学(ANU)の研究によって、内核の内側に新たな層が存在する可能性があることが明らかとなった......>

地球の内部は4つの層で構成され、地表から70キロの「地殻」の下に2890キロまで「マントル」があり、さらに5150キロまでの「外核」の内側に「内核」があると考えられてきた。しかしこのほど、内核の内側に新たな層が存在する可能性があることが明らかとなった。

内核は、主成分である鉄とニッケルからなる固体で、摂氏5000度を超える高温であると推定されている。内核を極方向(南北方向)に通過する地震波は、赤道方向(東西方向)を通過するものよりも速いことが知られ、これを「異方性」という。

matuoka20210310b.jpg

地球内部構造のこれまでの認識 wikimedia

地震波が内核を通過する時間に着目して、内核の構造モデルを調べた

オーストラリア国立大学(ANU)の研究チームは、地震波が内核を通過する時間に着目し、国際地震センター(ISC)が収集した観測データと検索アルゴリズムを用いて、数千ものパターンから観測データと適合する内核の構造モデルを調べた。その研究成果は、2020年12月7日に学術雑誌「ジャーナル・オブ・ジオフィジカル・リサーチ」で発表されている。

RayPathsThroughEarth1.jpeg

Stephenson, Journal of Geophysical Research

これによると、地球の中心部から半径650キロ(地表から5710キロ)において、異方性の速い方向は地軸と平行に、遅い方向では54度傾いていることがわかった。鉄の構造に変化があり、地球の歴史で2度にわたって冷却イベントがあったことを示すものとみられている。

「地球の内部には、従来の4つの層とは別の層が存在するのではないか」との仮説は長年、議論されてきたが、これを裏付けるデータは乏しかった。

「教科書を書き換える必要があるかもしれない」

研究論文の筆頭著者でオーストラリア国立大学の博士課程に在籍するジョアンナ・スティーブンソン研究員は、一連の研究成果について「まだその多くが謎に包まれているものの、地球についての解明に役立つパズルのピースを加えることができた」とし、「とてもワクワクする。教科書を書き換える必要があるかもしれない」と述べている


Scientists Detect a New, Hidden Layer to Planet Earth

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロシア、ウクライナ復興に凍結資産活用で合意も 和平

ビジネス

AIが投資家の反応加速、政策伝達への影響不明=ジェ

ワールド

不法移民3.8万人強制送還、トランプ氏就任から1カ

ビジネス

米中古住宅販売、1月4.9%減の408万戸 金利高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中