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米外交

最善の対中政策は「何もしないこと」だ

Let China Hamper Itself

2021年3月8日(月)12時00分
サルバトーリ・バボネス(シドニー大学社会学准教授)

こうした措置は中国政府が直面する改革圧力を軽減することなく、米中関係の融和ムードを醸成する。

ただし、バイデンが最優先すべきは「しない」ということだ。パニックに陥る理由や正当防衛の根拠、戦争を正当化しかねない要因を中国政府に与えてはならない。

それは同時に、同盟国を味方にとどめ、中国の転落を早める最良の方法でもある。米政府の立場は、同盟国がアメリカの支援を得ているときではなく、支援を必要とするときに最も強大になる。

そして中国の体制はアメリカが打倒できるものではなく、内側から解体するしかない。

何もしないことは、米大統領の座にある者にとって、政治的にも気質的にも最も難しい。大統領の絶大な権力は、それを行使したいという抗し難い誘惑を生み、断固たるリーダーシップの在り方に関してさまざまな意見も飛び交う。

しかし現状では、断固たるリーダーシップを発揮すれば、既に良好な政策環境を混乱させるだけになりかねない。

現状では、中国が勝利する唯一の手段は危機を誘発することだ。危機が起きれば、それに続く混乱に付け込むことができる。バイデンの最も重要な仕事は、決して危機が起きないようにすることだ。

From Foreign Policy Magazine

<2021年3月16日号掲載>

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