最新記事

韓国

日本を目指す韓国ネイバー、LINEの個人情報海外流出で厳しい船出に

2021年3月22日(月)18時00分
佐々木和義

LINEとヤフージャパンを運営するZホールディングスが3月1日に経営統合した矢先に、問題発覚......REUTERS/Toru Hanai

<LINE利用者の個人情報海外流出が発覚。事業の中心軸を韓国から日本に移す戦略を掲げているネイバーにとっても厳しい船出となった......>

無料通信アプリ「LINE」利用者の個人情報が中国の関連会社で閲覧可能になっていたことが発覚し、総務省は使用を停止、個人情報保護委員会がLINEと親会社のZホールディングスに、個人情報保護法に基づく報告を求めた。LINEとヤフージャパンを運営するZホールディングスが2021年3月1日に経営統合した矢先である。

経営統合で発足したAホールディングスの社長には、ソフトバンクの宮内謙社長が就任し、韓国ネイバーを創業した李海珍氏が会長に就任したが、ネイバーは事業の中心軸を韓国から日本に移す戦略を掲げている。

ネイバーは役員会議の30%を日本語で行い、プレゼンテーション資料を日本語に自動翻訳するシステムを備えており、日本語を学ぶ職員が増えているという。韓聖淑(ハン・ソンスク)代表が、日本でネットショッピングをリリースする意向を示している。

ネイバーはサムスン発だった

ネイバーは韓国でベンチャーブームが起きた1997年、サムスンSDSの社内公募で採用され、98年1月にサービスを開始した。サムスンはインターネット市場が自社には小さすぎると考えて、99年に分社化した。

当時、ネイバーの検索エンジンはお世辞にも優秀とはいえず、韓国語のコンテンツも貧弱で、ダウムやヤフー、ライコスなどに押されて5位にとどまっていた。

ネイバーは、先行するダウムやヤフー・コリアが行なっていないサービスを検討し、知恵袋やブログとコミュニティで構成されたカフェなどを開始した。また、映画「猟奇的な彼女」で主役を務めたチョン·ジヒョンを広告塔に起用した。

インターネットコミュニティの「カフェ」がネイバーの成長を後押しした。さらに、早くからインターネットショッピングが発達した。百貨店はテナント方式が主流で、入店企業の負担で販売員を常駐させる必要がある。大手スーパーは確実に売れる商品のみを取り扱い、コンビニエンスストアも同様だ。認知度の低い商品が店頭に並ぶことはない。

後発企業など、早くからインターネット販売を導入したが、企業が発信する情報は誇張が多いと考える韓国人は少なくない。商品を購入した人がネイバー・カフェに書き込んだレビューを見て、ネイバーショッピングで購入する市場が形成され、企業がネイバーブロガーにレビューを依頼する広告スタイルが定着した。

ネイバーショッピングは、ネイバー社が運営するスマート・ストアの商品に加えて、Gマーケットやオークション、クーパンなど大手ECモールの商品も検索できることから韓国ネット通販検索で70%以上のシェアがある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪3月住宅価格は過去最高、4年ぶり利下げ受け=コア

ビジネス

アーム設計のデータセンター用CPU、年末にシェア5

ビジネス

米ブラックロックCEO、保護主義台頭に警鐘 「二極

ワールド

ガザの砂地から救助隊15人の遺体回収、国連がイスラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中