最新記事

韓国

日本を目指す韓国ネイバー、LINEの個人情報海外流出で厳しい船出に

2021年3月22日(月)18時00分
佐々木和義

震災がきっかけで、LINEを開発

ネイバーは設立まもない2000年、日本語検索サービスや日韓翻訳サービスなどを開始した。当時の日本はヤフー・ジャパン、インフォシーク、NTTグループのgooやサービスプロバイダ各社がポータルサイトを運営していた。2001年、米グーグルが日本に進出、2005年にMSNが日本語サービスを開始して収益が伸び悩んだネイバーは日本語サービスを終了した。

ネイバーは2007年、日本に再進出すると発表。「ネイバーまとめ」を開始してライブドアを買収、LINEサービスを開始した。ネイバーの李海珍会長は、2011年3月、東日本大地震の被災者が家族や親戚と連絡を取ろうとする姿を目にした。電話回線がまだ完全には回復していなかった。

李会長は、韓国で普及していたカカオトークを参考にLINEサービス発案。子会社のNHN Japanが開発を担当し、会長自身が日本に滞在して陣頭指揮をとった。日本、韓国、中国、米国などさまざまな国籍者が開発に参加したLINEは日本をはじめ、台湾やタイなどアジアを中心に広まった。

LINEの画像や動画は韓国ネイバーのサーバに保管

韓国ネイバーは、検索サービスやコミュニティ、ショッピング、ニュース、不動産、地図など、生活や仕事で必要なあらゆる情報を提供する。同社が開発した翻訳アプリのPapago(パパゴ)は、18年2月の平昌冬季五輪で韓国警察が公式採用し、五輪後は韓国に居住する外国人や訪韓外国人とのコミュニケーションに使われている。

企業や政治家、芸能人の命運もネイバー次第で、ネイバーニュースに掲載されないメディア社が存続の危機に直面するほど影響力を持っている。

ネイバーが圧倒的なシェアを持つ韓国市場だが、グーグルに移行する人が増えている。ヤフー・ジャパンも米国ヤフーのライセンスで、国外では「ヤフー」以外のブランドが必要となる。2社の思惑が合致して経営統合に繋がった。

LINEの画像や動画は韓国ネイバーのサーバに保管されていることが判明している。筆者が数か月前に会った警察官は、韓国サイバー警察はカカオトークの情報にはアクセスできるが、LINEはアクセスできないと残念そうに話しており、日本人利用者の情報が漏れるなどの被害を受ける可能性は小さいが、Aホールディングスにとって厳しい船出となりそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中