メルケルのいないドイツ与党CDUは迷走中
A Body Blow To CDU
例えば、極右政党のドイツのための選択肢(AfD)は5年前、15%の得票率で同州議会の最大野党に躍り出たが、今回は10%を割り込み最大野党の座から転落した。
これは、AfDがドイツ全体で勢いを失いつつあることを示唆しているのかもしれない。党の内紛とコロナ禍で、AfDの看板政策である「反移民」のメッセージはインパクトを失った。ドイツ政府の情報機関が、AfDを正式に「極右の疑いがある組織」に指定し、監視対象としたことも逆風となりそうだ。
ただ、AfDがバーデン・ビュルテンベルク州議会選(と同時に行われた隣のラインラント・プファルツ州議会選)で、陰謀論の拡散と情報操作に力を入れたことは、長期的な影響をもたらしそうだ。
AfDに言わせれば、政府は国民の自由を抑圧する方法をいつも考えており、新型コロナはそのための口実だ。政府の接触確認アプリは感染拡大の追跡以外の目的で使用されていて、ワクチン接種は義務として強制される――。
こうした嘘または事実無根の主張を選挙戦で声高にまき散らしたことは、シュツットガルトから「クエルデンケン運動」と呼ばれる陰謀論勢力が広がる土壌をつくった。
クエルデンケンとは「型破り思考」という意味だが、実際に言っていることは陰謀論にほかならない。それが極右と反ワクチン派と「コロナなんて存在しない」と主張する人々、そしてロックダウン(都市封鎖)に不満を抱く商店主などから幅広い支持を集めるようになった。
ドイツの情報機関は国内での偽情報拡散だけでなく、外国の介入にも警戒している。EUの欧州対外行動庁は最近、ロシアによる偽情報拡散活動の最大のターゲットはドイツだと指摘している。
バーデン・ビュルテンベルク州議会選では、中国の影もちらついた。華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)がCDUの州大会のスポンサーになった一方で、FDPが孔子学院を通じた中国の影響力拡大に懸念を表明した(FDPの得票率は2ポイント上昇)。