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東日本大震災10年

福島第一原発事故10年、担当相だった細野豪志氏の「反省」と「課題」

2021年3月11日(木)15時04分
長岡義博(本誌編集長)

――なぜ人はゼロリスクを求めるのでしょうか。

細野:リスクがある、というニュースはメディアで伝えやすい。先日、コロナワクチンを打った方がくも膜下出血で亡くなった、というニュースが流れました。因果関係は考えにくいが、見出しとして立てやすく、SNSでもバズる。その部分だけ見れば事実だが、科学的なファクトを見るべきです。

処理水を流すことは、ゼロリスクではないかもしれない。しかし、これまで世界では普通に(海洋に)流されてきた。(放射性物質の)トリチウムの安全性について科学的にすべてわかっているわけではないが、今のところ被害は出ていないし、今後も出ないと予想されている。リスクはある、ということだけ流すのはフェアではない。風評被害が出ている、とだけ情報を流すのは風評被害の拡散でしかないのと同じです。

とはいえ日本人は冷静で、ほとんどの国民はそういった情報が流れても冷静に受け止めると思います。処理水の問題も同じです。例えば福島産の食品については、90%以上の人が安全性に問題がないので気にせず食べる、と言うんです。ほとんどの人は冷静だが、一部リスクを過大視する人がいて、そういった人たちの声が大きく、政策決定も影響されてしまう。

――東京は今まで福島に原発を押し付けてきた。事故で過大な負担を強いているのに、処理水の問題まで福島に押し付けていいのでしょうか。

細野:一昨年、日本維新の会のみなさんから「大阪湾で放出を」という話が出たことがありました。維新らしい義侠心のある話でしたが、現実には難しい。(海洋汚染について定めた)ロンドン条約があり、船からは出せず、陸からしか放出できません。新たな陸上の場所から放出するとなると、大きな建物も作らなければならない。

福島だけに負担を押し付けるべきでない、という意味では、中間貯蔵施設の除染土の再生利用を進めるのはあります。いま、線量が8000ベクレル/キロ(編集部注:1年間その隣で作業しても追加被ばくが1ミリシーベルト以内に留まる)を大きく下回っているので、安全性が確保されたものについては道路工事の路盤材に使う、家庭ごみ焼却灰の最終処分場の覆土に使うことをインセンティブを付けて進める。そして最後に残った線量が高いものをどう処理するか、という議論に集約しないと膨大な処理量になる、と環境省に強く言ってきました。

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