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東日本大震災10年

福島第一原発事故10年、担当相だった細野豪志氏の「反省」と「課題」

2021年3月11日(木)15時04分
長岡義博(本誌編集長)

――科学的な正しさを強く訴えても、国民は簡単には耳を傾けてくれない。

細野:マイナス面だけを議論すると、どうしても煮詰まってしまうんです。福島に関してはアドバンテージもある。福島沖はほぼ10年間漁をやっていないので、魚は数も多いしサイズも大きいです。もともと親潮と黒潮がぶつかるところで魚の質が良く、その質がさらに上がっている。そういったプラス面をアピールすることで流通し、買い手がつく状況をつくらないといけないです。

岩手県と宮城県のがれき広域処理を環境大臣のときにやりました。全国にお願いして、私の地元の静岡県でも5つぐらいの自治体が受け入れてくれた。当時、「そんなことをしたら静岡県の食べ物が風評被害で売れない」という話があったが、そんなことはなかった。大阪も北九州も東京も受け入れたのですが、初めはものすごく反対運動が起きる。でも、実害が起きないのでみんな冷静に受け止めました。

処理水もきちんとやれば可能だと思います。もちろん100%モニタリングをする。IAEAも監視に加わると言っているから、国際社会のモニタリングも受ける。情報公開をすれば、一時的にいろいろなことは起きるが冷静に受け止められる状況は作れる。日本人は冷静さ、バランス感覚を持っていると思います。

――竜田一人さんが対談の中で、細野さんが当時、(追加被ばくの線量を年間)1ミリシーベルトに決めたことを批判しています。

細野:「(1ミリシーベルトは)安全の基準そのものとは関係ない」と言ってはいたが、伝わらなかった。福島県浜通りの多くの地域では安全です、と力を入れて言えば良かった。

なぜそれが言えなかったか。事故を起こした責任の一端があるから、「安全だ」と言うことを躊躇した部分はあります。科学的というより政治的な判断をしていた。「すぐに帰れます、(1ミリシーベルトは)安全基準とは関係ありません」ということを、もっと言うべきだった。丁寧な説明はしたが、反論したり断言したりはしなかった。

科学的なコンセンサスがあるものについては、きちんと言うべきです。科学者は10年後も、「これまでのところ安全です」としか言わない。それは100年後も変わらない。結果として、「除染が終わらないと帰れない」という意見が続き、帰還が遅れた。街の復興にも遅れが出た。それだけでなく、転々と避難することで命を落とした人もたくさんいる。被ばくでなく、避難の影響で体調を崩したり命を落とした人は相当いるんです。

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