最新記事

パンデミック

愛と悲しみのバレンタイン 花屋が語るコロナ禍のドラマ

2021年2月14日(日)18時14分

ロサンゼルスの花屋「デビッズ・フラワーズ」で働くマリア・アルバレズさん(25歳)によれば、同店のマネジャーたちは、バレンタインデーの需要を理由に、葬儀用の生花を求める遺族の注文を断らざるをえなかったという。

「悲しくて、私たちも胸を痛めている。葬儀のための生花を用意できないと遺族に告げるのは本当に辛い」とアルバレズさんは言う。「おなじみの顧客も多い。家族が入院し、数日後に亡くなってしまった。その話を聞かせてくれた。彼らはとても傷ついている」と語った。

アルバレズさんは、悲しみに暮れる人々に、葬儀用の生花の費用を告げるのも辛いという。供給が滞り、需要が膨大なため、葬儀用の花輪の価格も、ほんの数週間のうちに85ドルから120ドルに上昇した。

「そういう家族の多くは、仕事も失っている。彼らにとっては大金だ。何とか元の価格で提供してあげたいと思うが、そうも行かない。今は仕入れ値も非常に高くなっている」とため息をついた。

想いを届けるビジネス

米国の生花産業をまとめる最大の業界団体である全米生花店協会によれば、国内で販売される生花の大半は、エクアドルとメキシコからの輸入品だ。

多くはオンラインで行われる生花の注文はここ数カ月で急増しており、サプライチェーンは逼迫している。全米規模で生花のオンライン販売を行っているファームガール・フラワーズの創業者であるクリスティナ・スタンベルCEOによれば、十分な量の生花を期日どおりに配達するための飛行機やトラックの余裕も不足してきたという。

ケン・フライタグさん(67歳)は、テキサス州オースティンで40年間、家族経営の生花販売を営んできた。フライタグさんによれば経営はおおむね順調だったが、今月は大変だったという。息子と娘、孫たちがCOVID-19に感染したというだけの理由ではない。

フライタグさんと約50人の従業員は、注文を受けた花に添えるカードを印刷する前に、誤りがないか読み合わせをする。

「多くが、お悔やみのカードだった」とフライタグさんは言う。「その家族に何があったかは理解できる。花屋というのは、想いを届けるビジネスなのだ」

(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・フィット感で人気の「ウレタンマスク」本当のヤバさ ウイルス専門家の徹底検証で新事実
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...
→→→【2021年最新 証券会社ランキング】



20241210issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年12月10日号(12月3日発売)は「サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦」特集。地域から地球を救う11のチャレンジとJO1のメンバーが語る「環境のためにできること」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

「安保の状況根底から変わること危惧」と石破首相、韓

ビジネス

欧州経済、今後数カ月で鈍化へ 貿易への脅威も増大=

ビジネス

VWブルーメCEO、労使交渉で危機感訴え 労働者側

ワールド

プーチン氏、外貨準備の必要性を疑問視 ビットコイン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない国」はどこ?
  • 4
    韓国ユン大統領、突然の戒厳令発表 国会が解除要求…
  • 5
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 6
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 7
    肌を若く保つコツはありますか?...和田秀樹医師に聞…
  • 8
    混乱続く兵庫県知事選、結局SNSが「真実」を映したの…
  • 9
    ついに刑事告発された、斎藤知事のPR会社は「クロ」…
  • 10
    JO1が表紙を飾る『ニューズウィーク日本版12月10日号…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 4
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 5
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 6
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 7
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合…
  • 10
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中