愛と悲しみのバレンタイン 花屋が語るコロナ禍のドラマ
デボラ・デラフローさんは40年にわたり花屋を営んできた。その彼女にとっても、今年のような2月は初めてだ。写真は葬儀用の花を運ぶ人。ロサンゼルスで4日撮影(2021年 ロイター/Lucy Nicholson)
デボラ・デラフローさんは40年にわたり花屋を営んできた。その彼女にとっても、今年のような2月は初めてだ。
「『大好きなあなたへ』というカードを送る人がいる一方で、『大好きだったあなたへ』というカードを送る人がいる」とデラフローさん。花屋にとって1年で最も忙しい「かき入れ時」の2月、彼女はバレンタインデー用のブーケとカードを用意しつつ、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のために愛する人を失った人からの注文への対応にも追われていた。
3000マイル(約4828キロメートル)離れたロサンゼルスの花屋で働くフェルナンド・ペラータさんは、この2カ月間、新型コロナウイルスの犠牲者を出した100世帯以上の家族に花を売ってきた。悲しみに沈む家族の多くは、以前からのなじみ客だ。
「ある日顔を合わせた顧客が、翌日には亡くなっていた」と23歳のペラータさんは言う。ある母親は、子どもたちのために何年も花を買っていたという。だが、最近になってその息子と娘が、母親の葬儀のためにバラを買いにきた。
ペラータさんが働くのは、「スキッド・ロウ」「ファッション・ディストリクト」両地区に接し、生花販売の盛んな地域だ。歩道には、バレンタインデー用の花柄テディベアの隣に、バラで作られた3フィート(約91センチメートル)大の葬儀用十字架や白い天使の羽がイーゼルに飾られている。
葬儀需要で再び繁忙に
年間売上高が350億ドル(約3兆6580億円)規模の生花産業は、恐らく他のどの産業よりも、家庭での喜びや悲しみ、記念日に深く関わっているセクターである。花屋の店員たちが2月14日のバレンタインデーに備える一方で、COVID-19による米国内の死亡者は46万人に迫っている。多くの州では、今も1日あたりの死亡者数が過去最高の水準にある。
ロサンゼルスのダウンタウンにある国内最大の生花市場の1つ、カリフォルニア・フラワー・モールのマーク・チャトフ最高経営責任者(CEO)(56歳)によれば、昨年3月にカリフォルニア州が最初のロックダウンに入ったとき、結婚式や卒業式、会議その他の大型イベントが突然消滅してしまったため、一部の花屋は休業したという。だが、その後はパンデミックによって葬儀が急増した。
「(今月は)バレンタインデーと葬儀だ。葬儀用の需要のおかげで、花屋は大忙しだ。うれしいやら悲しいやら。繁盛はしているが、理由が良くない」とチャトフCEOは話す。