最新記事

弾劾裁判

トランプ弾劾裁判、「反乱扇動罪」で問われているものは何か

Why Inciting an Insurrection Isn't Considered Treason, Even if Found Guilty

2021年2月9日(火)18時46分
ジェニー・フィンク

トランプは支持者を煽って暴動を起こさせた罪に問われている Leah Millis-REUTERS

<国家反逆罪は死刑適用もありうるアメリカで最も思い罪で、アメリカに戦争を仕掛けるかその支援をする行為。トランプが問われている扇動罪はもっと軽いし証明のハードルも低いが>

ドナルド・トランプ前米大統領の弾劾裁判の焦点は、彼が反乱を扇動したか否かだ。扇動罪は、アメリカで最も重い罪である「国家反逆罪」よりは軽く、証明しやすいとされている。

国への反逆は弾劾の対象となる罪だが、トランプにも、1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件のどの参加者にも適用されていない。トランプは選挙の不正を主張し、支持者を煽って連邦議会議事堂に乱入させ、議会で行われていたジョー・バイデン新大統領の承認手続きを妨害すべく暴力行為に及ばせた「重罪および軽罪」に問われている。

ミズーリ大学法学大学院のフランク・ボーマン教授は、反逆罪とは「合衆国に対して戦争を起こす」行為や、「ほかの人(多くの場合は外国人)を支援して合衆国相手に戦争を起こす」行為とされていると説明。彼によれば、反逆罪についてはきちんとした定義がないが、「軍隊などを使った組織的な戦争までには至らない何らかの行為」とされている。

扇動罪は状況証拠による証明が可能

扇動罪と異なり、反逆罪は合衆国憲法で定義されている。広義に解釈して、政敵を倒すための「武器」として使われないようにするためだ。反逆罪に問うためには、その人物が合衆国に対する「戦争」を起こすか、国家の敵に「援助と便宜を与えて」それに加担していなければならない。

フロリダ大学法学大学院のマイケル・モーリー准教授は本誌に対して、特定の人物を反逆罪で有罪とする(死刑が適用される可能性がある)ためには、同一の明白な行為について2人の証人が証言をするか、公開の法廷で本人が自白する必要があると説明。反乱の扇動罪の場合は、必ずしもこれと同じ条件を満たす必要はなく、状況証拠によって罪を証明することが可能だと述べた。

合衆国法典では、扇動罪は合衆国に対する「反乱や暴動を煽る、それに加担する、支援するか関与すること」、あるいは「それに援助および便宜を提供すること」と定めており、有罪となれば最大10年の禁錮刑に処される。しかし複数の専門家は、刑事裁判と弾劾裁判とはまったくの別ものだと指摘する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国高官、米関税を批判 「香港の生活奪う」

ワールド

韓国高官、米とのLNG開発協議でアラスカへ=聯合ニ

ワールド

ウクライナ支援・ロシア制裁へ法案提出、米民主下院議

ワールド

AUKUSの豪原潜配備計画、米国の技術輸出規制が障
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトランプ関税ではなく、習近平の「失策」
  • 3
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができているのは「米国でなく中国」である理由
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 6
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 7
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 8
    シャーロット王女と「親友」の絶妙な距離感が話題に.…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    米ステルス戦闘機とロシア軍用機2機が「超近接飛行」…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 4
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 10
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中