トランプ弾劾裁判、「反乱扇動罪」で問われているものは何か
Why Inciting an Insurrection Isn't Considered Treason, Even if Found Guilty
バッファロー大学のジム・ガードナー教授(法学)は本誌に対して、次のように指摘した。「弾劾訴追は権力の乱用を根拠とした政治的な手続きだ。下院が反乱や反逆について、法律上の定義を満たす証拠を持っているかどうかは、まったく重要ではない」
合衆国憲法の下、下院には大統領を弾劾訴追する権限があり、上院には「反逆罪、収賄罪、その他の重罪や軽罪」で有罪評決を下す権限がある。ボーマンは、トランプが弾劾対象になり得る行為に関与したことは明らかだが、反逆罪は犯しておらず、収賄罪も適用の対象外であるため、下院による弾劾訴追は、反乱の扇動を根拠にトランプを「重罪および軽罪」に問うものだと指摘した。
重罪と軽罪は反逆罪よりも「広範な概念」であり、議員たちは扇動罪に重点を置く方がより「柔軟な」対応ができると考えたのかもしれないとモーリーは言う。
トランプの弾劾裁判は2月9日に始まる予定で、有罪評決には上院議員67人の支持を獲得する必要がある。トランプを擁護する者たちは、トランプは法律上の犯罪を犯してはいないと主張し、そのほかの者たちは、それがなくとも弾劾の対象にはなると主張するだろう。
「権力の乱用」こそが焦点
連邦議会のウェブサイトに掲載されている注釈付きの合衆国憲法には、「本憲法が承認された時点で、重罪および軽罪とは、公職に就く者が国家に対して犯した政治的な罪または不正行為に対して適用されるものという理解だ」と記されている。
アメリカの初代財務長官であるアレクサンダー・ハミルトンは(合衆国憲法の意義を訴える論説)「フェデラリスト・ペーパーズ」第65篇の中で、弾劾対象となる罪とは「公職に就く者による不正行為、つまり権力の乱用や国民の信頼を裏切る行為を指す」と説明している。
ガードナーは、弾劾裁判において法律上の犯罪行為の有無は重要ではないものの、検察官役を務める下院議員たちは、トランプによる法律違反の証明を試みる可能性があると指摘した。トランプの弁護団がそれを重要な論点にしようとしているからだ。
「議員たちに助言をするなら、こう言うだろう。あなた方が適用すべき基準は、弾劾訴追された人物が合衆国憲法に違反する方法で権力を乱用したか否かであり、問題はその一点に尽きるのだと」
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら