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ミャンマー軍司令官、全土に広がるデモをけん制 再選挙と権限移譲を約束 

2021年2月9日(火)09時56分

ミャンマー国軍のミン・アウン・フライン総司令官は8日、軍事クーデターによる政権掌握後初めてテレビ演説し、感情ではなく事実を重視するよう国民に訴えた。MRTV提供(2021年 ロイター)

ミャンマー国軍のミン・アウン・フライン総司令官は8日、国営テレビで演説し、民主主義の規則に従い再び選挙を実施すると述べ、勝利した政党に権力を移譲すると表明した。クーデターで全権を掌握した後、同氏が国民向けに演説するのは初めて。

「感情に任せず、事実を重視するよう求める」と述べ、ミャンマー全土に広がる反国軍デモをけん制した。

また、アウン・サン・スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が勝利した昨年11月の総選挙について、不正があったと改めて主張し、クーデターを正当化した。

選挙の実施時期は明確にしなかったが、国軍は非常事態宣言を1年続けるとしている。

過去の軍事政権とは異なり、憲法を尊重すると強調。今回の政変で外交政策が変更することはなく、ミャンマーへの投資を歓迎すると強調した。クーデターで拘束したアウン・サン・スーチー氏には言及しなかった。

各地で広がる抗議デモ

ミャンマーでは先週の軍事クーデターに対する抗議活動が3日連続で行われ、数万人が街頭デモに参加。不服従運動への支持を呼び掛ける声も大きくなっており、クーデターに対する国際社会の非難の声も広がっている。

首都ネピドーではこの日、警察が、抗議デモ隊に対し解散しなければ武力で排除すると警告した。

メディアの中継では、道路に武装警察が3列に並び、放水車が待機している。デモ隊は、クーデターへの抗議の声を上げるとともに、警察に対し、国軍でなく人民のために働くべきと訴えた。

この日、在ミャンマー米国大使館は、ヤンゴンとマンダレーで午後8時から翌朝午前4時までの外出禁止令が出されたと報告を受けたと明らかにした。

国営テレビは8日、国民の不法行為を容認せず、犯罪者は阻止され排除されるとのメッセージを流した。

MRTVのメッセージでは、国家の安定や国民の安全、法の統治を揺るがす行動に対しては法的措置を取るべきだと表明。また、人々は強制されたり脅されたりなどしているとして、規律がなければ民主主義が崩壊すると警告した。

通常番組の放送中、テロップの形でメッセージが表示されている。発信源など特定の組織などへの言及はなかったが、当局がデモに言及したコメントはこれが初めて。

国連人権理、12日に特別会合

国連人権理事会は、ミャンマー問題を巡り12日に特別会合を開催すると明らかにした。英国と欧州連合(EU)は、特別会合の開催を要請。欧州諸国や日本、韓国などが開催を支持した。

ミャンマーのNLD幹部は8日、国連のグテレス事務総長宛の書簡で「クーデターを無効にするためにあらゆる手段を行使」するよう訴えた。国連報道官は書簡を受け取ったと確認した。

*内容を追加しました。

[ロイター]


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