最新記事

米中関係

バイデン政権の本音か? 米中電話会談、「一つの中国」原則に関する米中発表の食い違い

2021年2月8日(月)19時48分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

四、世界のすべての国が守るべきは、国連を核心とした、国際法に基づく国際秩序であり、国連憲章の目的と原則を核心とした国際関係の総意であって、決して一部の国が言うところのルールに基づく国際秩序ではない。

五、「アメリカはアジア太平洋地域の平和と安定のために建設的な役割を果たすよう」(ブリンケンに対して)促した。ミャンマー情勢に関しては(内政干渉をしないという)中国の立場を表明し、国際社会がミャンマー問題の適切な解決のための良好な外部環境を構築すべきだと強調した。

六、ブリンケンは、「米中関係は両国および世界にとって非常に重要だ。アメリカは中国とともに(協力しながら)安定的で建設的な両国関係を発展させていきたい」と言った。ブリンケンはさらに「アメリカは今後も『一つの中国』政策を引き続き推し進めていき、かつ三つのコミュニケを必ず遵守していく。この政策に関するアメリカの立場は変わっていない」と繰り返し述べた。

七、双方は、中米両国関係や共通の関心事である国際的・地域的な問題について、今後も緊密な連携と意思疎通を維持することに合意した。

ブリンケンは本当に「『一つの中国』原則を遵守する」と言ったのか?

米中それぞれの発表内容には、相当な違いがある。まるで別の電話会談の発表を見ているようだ。もちろん、米中双方の政府による公式発表なので、自分がどれだけ「素晴らしいことを言ったか」に関しては、当然誇張するだろうことは考えられる。

しかし各政府の公式発表で、もし「相手が言ってないこと」を「言った」と発表していたとしたら、「私はそのようなことは言っていない」と、すぐさま抗議するのが、政府としての本筋だろう。

おまけにそれが、米中間の核心的問題であり、今後のアジア情勢に大きな影響を与える内容であるなら、ここは白黒を付けなければならない重要なポイントとなる。

然(しか)るに、ブリンケンは中国側の発表である「六」に反論しているだろうか?

少なくとも筆者が知る限りにおいては、ブリンケン側から「中国の発表は間違っている。私はそのようなことは言っていない」という抗議をしていないように思われる(もし情報が拾い切れていない場合は謝罪するが、いまこのコラムを書いている時点では、そういう抗議はないように思われる)。

なにしろ、トランプ政権ではあんなにまで台湾を擁護し、トランプ前大統領は「一つの中国は認めない」と宣言する勢いのところまで来ていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBとECB利下げは今年3回、GDP下振れ ゴー

ワールド

ルペン氏に有罪判決、被選挙権停止で次期大統領選出馬

ビジネス

中国人民銀、アウトライトリバースレポで3月に800

ビジネス

独2月小売売上は予想超えも輸入価格が大幅上昇、消費
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中