最新記事

陰謀論

陰謀論の次の標的は5G「コロナ禍の元凶は電磁波」

BEWARE THE COPYCATS

2021年2月5日(金)15時30分
ウィリアム・アーキン(ジャーナリスト、元陸軍情報分析官)

しかしFBIによれば、この集団が火災を起こした事実はない。ほかの勢力が通信インフラを攻撃するよう促すことを狙った声明だったと、FBIは結論付けている。

ネオナチ集団の内部向けメッセージにも、コロナ危機を「大々的な心理戦を仕掛ける絶好機」と位置付ける投稿があった。「5Gをめぐるヒステリーの広がり」に乗じてパニックと暴力をたき付けよう、というわけだ。

「新型コロナウイルスの感染拡大と5Gネットワークを結び付ける陰謀論は、通信インフラへの攻撃をけしかけている」と、国土安全保障省の対テロ・ミッションセンターも5月13日付の「内部限定」の報告書で述べている。「感染拡大が続けば、通信関連の作業員への攻撃も増えるだろう」とも、同報告書は指摘した。

しかしその後、BLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動と米大統領選に注目を奪われた結果、反5G運動は一時的に勢いを失った。この時期、大手ソーシャルメディア企業も、5G陰謀論関連の投稿ヘの監視を強めるようになった。

それを受けて、反5G活動家たちは昨年9月頃から、ロシアで開発された匿名性が高いメッセージアプリ「テレグラム」やロシア企業が運営するソーシャルメディア「フコンタクテ」に活動の舞台を移し始めたと、国土安全保障省は指摘する。こうして、反5G勢力による攻撃の脅威が再び高まってきたという。

加えて、ある「取扱注意」の報告書は、「ソーシャルメディアのインフルエンサーやセレブが陰謀論を信じ、フォロワーに広める」傾向にも警鐘を鳴らしている。

国土安全保障省のあるアナリストは、本誌にこう述べている(進行中の調査に関してコメントする権限がないことを理由に匿名を希望)。「反5G運動は非常に強力だ。この勢力が反ワクチン派やトランプ支持派と融合すれば、今後も長い間、頭痛の種になるだろう」

<本誌2021年2月2日号掲載>

20240514issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月14日号(5月8日発売)は「岸田のホンネ」特集。金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口……岸田文雄首相が本誌単独取材で語った「転換点の日本」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB「市場との対話」、専門家は高評価 国民の信頼

ワールド

ロシア戦術核兵器の演習計画、プーチン氏「異例ではな

ワールド

英世論調査、労働党リード拡大 地方選惨敗の与党に3

ワールド

ウクライナ議会、復興担当副首相と農相の解任決議案を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中